弟です。 ページ12
翌日。
教室に行くと、教卓にナイフの刺さったタコが置いてあった。
どうせカルマがやったんだろ。
特に気にも留めず席に着いた。
眠い。
いつもならテキトーに教科書を流し読みするところだが、昨日夜遅くまでレシピを考えたのがたたったらしい。
机の上で組んだ手の上に突っ伏し、目を閉じた。
どれくらい時間がたっただろうか。
殺せんせーのおはようございます、という声で目を開けた。
クラスは暗い雰囲気で包まれている。
ああ、あのタコのせいか。
挑発するカルマ。
殺せんせーはカルマの前までくるとどこからかミサイルを持ってきてなにかを作り出した。
「あッつ！」
そういいながらカルマが吐き出したのはタコ焼き。
……なんでやねん。
その後、度々カルマは殺せんせーを殺そうと奮闘していた。
だが、それらは全て防がれ、倍になって返されていた。
授業中に後ろから銃で狙えばハート柄のネイルアートを施され。
スープを目くらましにナイフを振ればかわいいエプロンをつけられ。
朗読中にナイフを刺そうとすれば真ん中わけに髪をセットされ。
なんとも滑稽な姿に変わっていた。
ちなみにどの姿も俺と紫陽花のスマホの中に入っている。
そして今現在カルマは木の上に座っている。
だいぶカリカリしているみたいだ。
「……カルマ君。
君ももうわかっているはずです。
あの先生に個人マークされてしまえば殺せる確率はほとんど０だと。
普通の先生じゃないんですよ。」
これ以上やっても無駄だ。
あくまでも刺激せず、諭すようにそう言った。
だが、どうやら彼は諦める気がなさそうだ。
彼の眼にはこの谷の景色とは別の物がうつっている。
しばらく彼の背中を見つめているとうしろから声がきこえた。
殺せんせーだ。
カルマは先生に先生が命を懸けて生徒を守ってくれる人かを確認した。
ああ、成程。
銃を構え、彼は後ろに倒れた。
当然そのまま彼の体は後ろに倒れていく。
きっと彼はＥ組に落ちることの原因となったあのことを思い出しているのだろう。
そう、生きていても人は死ぬ。
絶望すればそいつは死んだと同然だ。
『赤羽、お前が正しい！』
『阿須汰君、君が正しい。』
『先生はいつでもお前の味方だ！』
『阿須汰君、先生はいつでも君の味方だからね。』
『赤羽、どう見てもお前が悪い。』
『夏藤君、どう見ても君が悪い。』
＿＿＿絶望したその瞬間、人は死ぬ。
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作者名：相良 夜恵 x他1人 | 作成日時：2017年4月19日 22時
