├ ページ5
【備考】
アマルタル全土にその名を轟かす豪商・ソープロシュネー家の長女。
ソープロシュネー家はエルド歴761年創立、おおよそ600年の歴史を誇り、属する地においては領主たる貴族をも上回る影響力を持つ家柄である。初代サメフがその天才的な商才と巧みな話術によりたった一代にして莫大な富を築き上げたと伝えられており、現在でもソープロシュネー家傘下の店では彼女の肖像が看板として用いられている。
と、このように貴族にも劣らぬ力を持つソープロシュネー家だが、約十二年前取り潰しの危機に瀕していた。
当然と言えば当然のことであるのだが、彼らの属する地の領主たる貴族はソープロシュネー家のことをよく思ってはいなかった。一介の商家でありながら領主である貴族よりも強い影響力を持つ彼らは、領主による民の支配の障壁以外の何者でもないのである。それでも歴代の領主はソープロシュネー家が勢力を伸ばすことに直接歯止めをかけるようなことはしてこなかったのだが、痺れを切らした当代領主がその状況に一石を投じた。某日、領内の至るところにこのような掲示が行われた。
「ソープロシュネー家は平民の身でありながら領主たる貴族の転覆を目論む反逆者である」
それが単なる言い掛かりにすぎないことは誰の目にも明らかであったが、相手は上位存在たる貴族である。反発の声をあげれば次は自分たちが狙われかねない。そうして貴族の制裁を恐れた人々は次第にソープロシュネー家から離れていき、経営は一気に傾いた。
その窮地を救ったのが当時5歳であったロギストゥリアである。
ロギストゥリアは生来大人しく人見知りしやすい性分であった。故に通常であれば身内以外の相手に、ましてや高貴な相手に話しかけることなどあろうはずもない。そんなロギストゥリアが丁度侍従を伴って領内を廻っていた領主相手に談判を開き、ついに先日の掲示を撤回させてしまった。以降領主がソープロシュネー家に干渉することはなくなり、商売は元の軌道へと帰り咲いた。
その姿は10代にして商売を大成させた初代サメフ・ソープロシュネーを彷彿とさせるものであり、皆はロギストゥリアを「サメフの再来」と評し口々に褒め称えた。その功績を記念して「ロギストゥリア・サメフ・ソープロシュネー」と名を改めることとなったのだが、本人は逆上してとんでもない無礼を働いてしまったと恥じている。
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白銀刹那 | 作成日時:2022年10月31日 22時