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中村さんの口調や声色は、Aのかき乱されてしまった気持ちを落ち着かせた。
「それにしてもAちゃんは、こんな時間に出歩くなんて不用心だなあ。」
「空気を、吸い込みたくて。」
ああ分かるよ、と中村さんが頷き、大きく息を吸い込んだ。
「雨上がりのしっとりとした空気が夜になって冷えて、低く停滞している感じ。とてもいいよねえ。湿度が肌で感じられる。」
そういうことじゃないのだ。
初恋とも言えたあの梅雨入りの日から、Aは長く密かに片思いを続けてきたのだった。しかし知らぬ間に友人の彼氏となっていて、まさかその友人も浮気をされていたなんて、いわばあのクソ野郎に腹も立つし、健気に片思いを続けてきた自分が哀れで情けなかった。悶々と家にこもっているのが嫌で、思わず家を飛び出してきたら、中村さんに会うなんて。
Aは何も言わなかった。だが中村さんは、何かを悟ったように、Aの頭を撫でた。
「いつか、どこかで実るといいね。」
「え？あ、そうですね。」
中村さんわずかにかけた満月を見上げていた。
その時、くしゅんとAが小さくくしゃみをした。
「大丈夫？ちょっと肌寒いよね。」
「はい、少し。」
Aが答えるのが先か、肩にパーカーがかけられるのが先か、気付いた時にはAは肩に柔らかな温かさを感じていた。
「これ、は？」
「ん、着ときな。風邪引いちゃ困るよ。」
「でも中村さんが、風邪ーー」
「女の子は冷やしちゃダメだよ。」
中村さんがフードをAの頭にかけた。黒のフルジップパーカーからは柔軟剤のいい匂いがした。
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黒尾(プロフ) - 蒼凰さん» ありがとうございます。楽しんでいただけるようなお話考えていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年6月24日 21時) (
レス) id: 68c099bb5b (このIDを非表示/違反報告)
蒼凰 - 初コメント失礼します！この小説、とても好きです！これからも楽しみにしてます！体に気をつけて頑張ってください！ (2019年6月24日 19時) (レス) id: d530b8b740 (このIDを非表示/違反報告)
暖 - 対応ありがとうございます＜(_ _)＞楽しみにしてます！ (2019年6月19日 23時) (レス) id: 3edb6afb17 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾(プロフ) - 暖さん» ご意見ありがとうございます。本当ですね。只今調整いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 (2019年6月17日 23時) (レス) id: 68c099bb5b (このIDを非表示/違反報告)
暖 - コメント失礼します！小説読ませて頂いてます！意見なんですが、途中から名前が変換できていないと思うんですが、、(主人公)違ったらごめんなさい＜(_ _)＞ (2019年6月17日 23時) (レス) id: 3edb6afb17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒尾 | 作成日時：2019年6月17日 0時
