24 ページ24
.
「昨日、見かけたんだ。」
賢の腕の中、耳元で賢が呟いた。
「あの男は誰？」
賢の言う男というのは中村さんのことだとすぐに分かった。
「ただの知り合いですけど。」
Aは賢の肩を押して離れた。
「俺と別れたいのってその人が関わってる？」
関わっていないと言えば嘘になる気がした。ただ、中村さんは考えるきっかけ、考え方を変えるきっかけをくれただけで、要因となったわけではない。そういう点では関わっていないという方が正しかった。
「それは関係ありません。」
Aは少し考えてから答えた。賢が溜息をついた。
「分かった。じゃあさ、今はAから少し離れるよ。でも、諦めるわけじゃない。戻ってきたいと思ったらいつでも言って。俺はいつでもAを待ってる。」
たった1週間の彼氏、たった一度だけしたキス。最初で最後のキス。賢の元に戻ることはもうないとAは思った。彼の言う好きとAから彼を慕う気持ちは全く違うものだったから。
人に思われるという幸せを教えてくれた賢には感謝していた。ただ、自分との重さの違いが決定的な違和感になって纏わり付いて前には進めなかった。
Aは一度だけ微笑んで踵を返した。照りつける太陽が渡り廊下のアスファルトで反射して眩しく見えた。前向きな終わりだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒尾(プロフ) - 蒼凰さん» ありがとうございます。楽しんでいただけるようなお話考えていきますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年6月24日 21時) (
レス) id: 68c099bb5b (このIDを非表示/違反報告)
蒼凰 - 初コメント失礼します！この小説、とても好きです！これからも楽しみにしてます！体に気をつけて頑張ってください！ (2019年6月24日 19時) (レス) id: d530b8b740 (このIDを非表示/違反報告)
暖 - 対応ありがとうございます＜(_ _)＞楽しみにしてます！ (2019年6月19日 23時) (レス) id: 3edb6afb17 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾(プロフ) - 暖さん» ご意見ありがとうございます。本当ですね。只今調整いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 (2019年6月17日 23時) (レス) id: 68c099bb5b (このIDを非表示/違反報告)
暖 - コメント失礼します！小説読ませて頂いてます！意見なんですが、途中から名前が変換できていないと思うんですが、、(主人公)違ったらごめんなさい＜(_ _)＞ (2019年6月17日 23時) (レス) id: 3edb6afb17 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒尾 | 作成日時：2019年6月17日 0時
