前世は刀剣、今世は怠惰の主人（２） (ページ10)

今日:3 hit、昨日:13 hit、合計:22,477 hit

権利ページ10

～Aside～

「あんな尻軽な子だとは思わなかったわ。」
「父親が誰かもわからないんでしょ？」
「あの子、真面目そうな顔してね～。」

これが、冬切としての記憶が戻ってからさんざん言われた言葉でした。

最初は、本当にどうでもよかったんです。

はっきり言って、うるさいなとしか思ってもいませんでした。

どうせ、母親(この人)も周りの噂に耐えきれなくていつかは私を捨てるんだと思っていました。

でも、少しずつ母さんのことを信じれるようになってからは、申し訳なさしかありませんでした。

愛してくれるのは、とても嬉しいです。

でも、父親だと思っていた男がいつの間にかいなくなったあと、もしかしたら母は父に捨てられたのではないかと思いました。

「………さん。」

影で泣く母の姿を見て、誰の名前を呼んだのかはわかりませんでした。
でも、寂しげな、悲しげな、愛おしげな顔で泣く母の姿。
なんとなく父の名前を呼んでいるんだと思いました。
そして母はまだ父の事を想っているのだと。

………やっぱり捨てられてしまったんですね。

A「私が幸せに生きる権利なんてないんですよ。」
リリ「っ！」
A「母から父を奪って、母の時間を奪って、親戚からの信頼を奪いました。」

母だけじゃありません。

長谷部だってそうです。

私が主を斬れば良かったんです。

長谷部の穢れは私ほど酷くなかった。

まだ本霊のもとへ還れたかもしれません。

私は勇気が出ないという理由で、長谷部に任せてしまいました。

あそこで私がやると長谷部に言っていれば………。

A「だから、私は戦って死にたいんです。」

A「大切なものを守って………奪ってばかりの私でも愛してくれた母に、育ててくれてありがとうって感謝したいんです。」

戦うこと、守ること。

私は、それ以外のやり方なんてわかりません。