勇気と彼女の涙 ページ10
学校に登校すると、既に下駄箱付近で桜を見かけた。
だが、早速断る勇気なんて俺には全くなく、断ると言う事はそれと同時に桜を傷つけてしまうと言う事で
俺にはそれが出来なかった。
仮にも親友と妹、俺にとっても大事な友人、そんな思いが決意を惑わせている。
隣で俺を凝視している朔間の圧力が凄い。
「分かってる……」
あまりに睨んでくるものだから、勢いで一歩、また一歩と桜に近づいていく。
そして
「あっ、A、先輩!」
気づかれてしまった。
俺を見た途端に明るい笑顔を俺には向け、走り寄ってくる桜。
少し照れたような表情を見せ、それがまた俺に罪悪感を生ませる。
「よ、よお桜、おはよう、後先輩ってのはやめてくれ」
「へへ、それもそうっすね、付き合ってるんすから」
桜に誤解をされない為とは言え、俺は今、女の子の気持ちを弄んでしまっているのだ。
自分に酷く嫌悪感を感じた。
付き合ってる
もしもそれが事実じゃないと知ってしまえば、桜は泣いてしまうのだろうか。
目の前で可愛い笑顔を俺に向けて、頬を染めながら恥ずかしそうに俺を見る桜を
俺は、泣かせてしまうのだろうか。
その予感は案の定、当たってしまった。
**
時は放課後まで進み、俺はそれまでずっと、朔間に睨まれながら時間を過ごしていた。
後になればなるほど、言いにくい。
お昼休みにも、桜は俺のクラスまでやって来て、一緒に昼食を取ろうと誘って来た。
確実に、俺と付き合ってると、思っているのだ。
「あの……桜」
「は、はい?」
夕日が沈んでいく6時半の事、部活を終えた桜を俺は校門前で待っていた。
桜は俺を見かけた途端に嬉しそうに走り寄って来て、その姿にまた心が痛んだ。
このままではもっとこの子を傷つけてしまう、そう思った俺は、勇気を出す
「ごめん! 俺は桜とは付き合えない、ごめん!」
「……え?」
頭を45度に曲げ、桜の目の前で謝罪した。
当然目の前の桜は何が何だか分からず、ポカンとしている。
そんな桜に、俺は次々と話を続けていく。
「あの、付き合おうって確かに言ったんだけど
それはその場の勢いで言っちゃったっていうか……」
「……なんだよ、それ」
桜の瞳には涙が溜まっていた、流れ出してしまいそうな程の涙が溜まっていた。
予想はしていたものの、実際に涙を見てしまうと、恐ろしいほど酷い罪悪感を感じた。
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ヒビキ(プロフ) - めっちゃ面白かったです!夢主君可愛かったですww今までにないストーリー構成でとても楽しめました!新作なのですが、男主のファンタジー学園もの(女の子との恋愛はなし)だと嬉しいです!新作の方も内容がなにであろうと楽しみにしております! (2017年8月10日 20時) (レス) id: b814e0d67a (このIDを非表示/違反報告)
ろでる(プロフ) - 主人公の心情が揺れ動く姿がとても丁寧で、最後の文を読み終わった時に思わず微笑んでしまいました。とても面白かったです。新作についてなのですが、男主でローファンタジーをリクエストします。新作も楽しみです! (2017年8月9日 20時) (レス) id: edada860be (このIDを非表示/違反報告)
春猫(*`´) - 面白かったです!更新 頑張ってくださいね! (2017年7月1日 10時) (レス) id: 980aa223ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドロー | 作成日時:2017年6月28日 10時