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プロローグ ページ1

燃え盛るは、薄暗い月明かりが照らすビルの廃墟。中には男が一人。
 


「くそッ!ふざけやがってッ!!」



 ボタボタと服から滴り落ちる赤は燃え盛る炎によって黒くなっていく。呼吸が出来ない。息が苦しい。必死に酸素を肺と脳に送り込むが、すっかり二酸化炭素で充満したこの部屋の空気をぐるぐると吐きだすばかりだ。

 口にたまった血を吐き出し、なんとか出口へ向かう。しかし打たれた腹、ご自慢の足も骨折し身体はボロボロ。マフィアという厄介な仕事に就いておよそ八年。俺は今ほとんど死にかけている。

 敵対する対抗マフィアによる鎮圧のための奇襲。俺らのアジトには夜中火炎瓶が投げ込まれた。そのおかげでこの有り様。仲間をかばって打たれたのはいいが生憎急所に当たってしまい、出血が止まらない。



 退路は断たれ、自力で逃げ出す体力も持ち合わせていない。


 諦めかゆえか俺は燃え盛る室内で壁にもたれかかる。その先で何かが倒れるのが見えた。柱だ。根元が焼かれた柱が勢いよく倒れこみ唯一逃げられるであろう出口を完全に封鎖してしまった。


「ハハっ」


 思わず笑い声が漏れてしまう。これでもう完全に生き残れる可能性はゼロになったわけだ。動くだけでも内臓は焼かれ逆に血が多く漏れてしまう。もう腰から下の感覚はない。目もみえない。息もできない。結局俺は死ぬほどムカつくけど奴らの格好の餌となったのだ。


__ああ、俺死ぬんだな。


 自分の最後を悟った瞬間、急に自分の人生がそう悪くなかったように思えてきた。俺は一応人は殺した。それも何人も。それなりに殺した分だけ自分にも罰は帰ってきた。
 
 それでも、仲間は守れなかった時もある。しかし、今回ばかりは全員もれなく助けてやった。
 仲間を守れて自分だけ死ぬ。どっかのヒーロー様みてぇだな。今最高にカッコいいんじゃねえの俺、とふけっている間にも呼吸は苦しく、次第に意識も朦朧としてきた。

 そういや、最近後輩の奴がなんかハマってるマンガがあったな、ほら、えぇっと……『呪い回線』みたいな名前の。内容はなんとなくしか知らないけど可愛い後輩が推しに推しまくってたマンガだ。見る価値はありそう。でもその約束を守れることはなさそうだ。

 なぁ、神様高望はしない。どうか来世は一般で自分の大切なものを守れるように強い人間にしてください。
  血の匂いが辺りに充満していく。ぷつんと意識が途切れた頃俺は無機質な地面に倒れこんだ。

一話→



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海月 - とても面白かったです、更新頑張って下さい! (2021年10月21日 9時) (レス) @page10 id: f400237f3c (このIDを非表示/違反報告)
- 面白くて一気に見ちゃいました!更新頑張ってください (2021年10月3日 22時) (レス) @page1 id: 7e4922104a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怪獣 | 作成日時:2021年9月26日 15時

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