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油断大敵6(フョードル) ページ6

興奮し過ぎて風邪が悪化してきたのか、何だか視界がクラクラしてきた。頭の中から金槌で叩かれる様な痛みに耐えかねて、瞼を閉じ、微かに呻き声を洩らす。
私の苦痛を少しでも減らそうと思ったのか、フョードルが、私の頭を何度も優しく撫でた。
私を撫でるその手は、とても慈悲深く、愛情に溢れていた。
_______ふと思い出した。幼き頃、私が眠りに就くまでこうしてくれた、亡き父を。
あの人との思い出が、霧の様にぼんやりと目の前に映っては消えて行く。大人の癖に、子供みたいな無邪気な笑みを浮かべて私に笑いかける、あの人との記憶が。
もう、あの人が居たあの頃には戻れないのだ。もう二度と、あの人に会う事は出来無いのだ_______
つぅと目の端から、熱いモノが溢れ出て、頰を伝った。ソレが涙だと言う事に気付いたのは、フョードルの驚いた顔を目にしてからだった。
何故、涙を流したのかは分からない。そして何故、フョードルがそんな私を抱き締めてくれたのかさえも。
「_______無理しなくて良いんですよ」
フョードルの、優しく落ち着いた声が耳元で聞こえた。不思議と寒気はしなくなっていた。
「フョードル・・・・・・」
フョードルの衣服をギュッと掴み、離すまいと力強く抱き締める。
「大丈夫ですよ。私はずっと、貴女の傍に居ますから_______」
フョードルが、私の唇にキスをした。それは、愛と呼ぶに相応しく、私の全てを包み込む様なモノだった。
フョードルに包まれ、暗闇に意識を落とし始めた私の目からは、もう、涙は出ていなかった_______

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テツ(プロフ) - 宵の明星さん» わざわざ見に来て下さって有難うございます・・・!これからも更新頑張ります! (2018年4月7日 17時) (レス) id: d776172fc0 (このIDを非表示/違反報告)
宵の明星 - Twitterを見て、此方へ来ました。薄々、思ってはいたのですが真逆のご本人だったとは……。別人だと思っていました。私も小説を書いているので、宜しければ見て下さい。更新、応援しております。 (2018年4月7日 16時) (レス) id: 960304c1ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テツ | 作成日時:2018年3月7日 0時

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