【MHA】私が「神」とは世も末だ

落胆は置いていけ ページ7

「強そうな"個性"ね」

……いや、幻聴ではない。確かにこれらの言葉は発せられている。
天下の雄英高校ヒーロー科が、私の"個性"を凄いと？強そうと？ここまでとなると光栄過ぎて吐きそうだ。

「いや、あの……たった数分間たった半径10m以内の世界の仕組みを変えるだけで」
「全然たったじゃないよ！？」

あぁ、目が眩む。この方々は本当に雄英高校ヒーロー科だろうか。ここにいれば"普通"でいられると思っていたのに。
それに対する期待が大きかったばかりに、咄嗟の愛想笑いに絶望が混入してしまった。

「Aちゃん？」
「え？」
「ちょっと目が死んでたけどどうかした？」
「いいえ、何も」

今後は無意識に目を殺すことがないように気をつけよう。
私は、皮肉にも普通科時代と同じような中身の弁当に手をつけた。



午後の授業は、戦闘訓練なるものだった。
既に私の"個性"の情報はクラスに広まってしまったらしい。期待の眼差しが痛いことこの上ない。
それにしても、編入生を早速参加させるなんて流石ヒーロー科。スピード感がジェット機である。

「基本的には一対一、だが神士が入る組み合わせのみ一対二になる」

相澤先生の言葉に、周囲が微かにざわついた。
規律を乱してごめんなさい。"個性"で自分を2人にしてクラスを偶数人にしたら宜しいでしょうか。
ううん、流石にそれは気色悪いからやめよう。

「組み合わせはこちらで決めた。今から発表する」

トントン拍子の進捗に戸惑いながらも、無事組み合わせを把握し合流する。
一緒に戦ってくれるのは、尻尾が生えた男子。
そして、対戦相手はツートンカラーの髪をした男子。

……対戦相手の名前は知っている。轟 焦凍君だ。体育祭でとんでもない戦いをしていたから、強く印象に残っている。
本当に背筋が凍り、燃えるような戦いだった。いろんな意味で。

「宜しくね、神士さん」
「あぁ、宜しくね……」

しまった、名前が出てこない。対戦相手である轟君は覚えているのに、一緒に戦ってくれる味方は覚えていないなんて……

「そうだ、俺は尾白。"個性"は『尻尾』、近距離戦闘は得意な方かな」

なるほど、尾白君。なんだか目立たなそうでいいなぁ、だなんて失礼なことを思ってしまった。

そのとき、相澤先生から「それぞれバスでフィールドへ向かえ」との指示が通った。
不意に、轟君と目が合った。咄嗟に会釈をすると、相手も会釈をしてきた。なんだろう。
とにもかくにも、私達はバスに乗ってフィールドに向かった。

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