【実iｼ兄i者】どうにかしてください。【fj】

幼馴染み　26。 ページ27

「あがったよ〜」

『ん、おかえり。ちゃんと小窓開けてくれた？』

「うん、ばっちり。」


ゆるく笑いながら私の隣に腰を下ろす。外気に当たったばかりのその髪はいつもより柔らかそうで、濡れていて。


『ほらフジくん、タオルちょうだい。』
「ん、」

それに気づいて私が彼の髪を拭く。最初こそ驚いていたものの、毎日そうやって上がってくる辺り、大体は計画通りなのだろう。


私にすこぶる甘い彼だけど、10で考えると7ぐらいが甘えただったりする。
後ろに立った私にゆっくりと持たれかかってくる所等がそうだ。気持ちよさそうに目を閉じて、私の言葉を待つ。


小さく弧を描いた口が、彼の機嫌の良さをありありと伝えていた。
わかっていても止めはしないのは自分もこの時間が好きだから。


『ねぇ、フジくん』

「なぁに？」

『………、はい、出来たよ』


ありがと、嬉しそうに笑う顔はいつも変わらない。何回やっても彼は飽きることは無くて、逆に習慣付けたいのだ、とキヨさんは言っていた。


悲しいことに、自分で分かってしまうのだ。彼が、必死な事に。行動や言葉はゆっくりでも、私が飽きてしまわないように。離れないように色々と考えている。


それは、私が彼に『交渉先の社員が自分と同年代くらい若かった』となんの関係もない仕事先の話をしたからだろう。


……相手が、悪かったのだ。イケメンだと周りに噂され、しかも性格も学歴もいい。なんというチート。

綺麗に微笑んで私に名刺を差し出したその指は凄く綺麗で、ベースとやってるフジくんの手と比べて『やっぱり楽器弾いてる人の手の方が好きだなぁ』と比べてしまったのは恥ずかしい話。

仕方がないが、もう私はフジくんに捕まっている。自分から捕まえられに行ったんだ。そうそう離れるものか。

だから仕事先の彼がどんなに女性を引き付ける男の人だろうが私にはただの交渉相手。なにも特別なことはない。


けど、それが心配なんだよね。
私がその話をした次の日、すこし浮かない顔をしてたのを知ってるよ。やっぱ指を見て君と比べた事とかも話したら良かったかな。


そしたら、君の不安は小さくなった？


そんなに焦るのなら、必死なのなら。
早く閉じ込めてしまえばいいのに。


けど君は優しいから、すぐにそんな事しないで。私の事をかんがえてくれるんでしょ？



馬鹿だね



『(ずっとずっと君しか見れないよ。)』

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