【実iｼ兄i者】だから、君は俺の＿＿＿【ky】

君は　78。※ ページ35

キヨ「………A？」


不思議そうにキヨが言う。
ごめんね、動かないの。なにも、出来ないよ。


気持ち悪い、苦しい、気持ち悪い。
手で顔を押さえたいのにその手は動かない。


全て、全て縛られている気分だ。
息が出来なくて、なんとかもがいて少量の酸素を足掻くように吸っていても、流石に頭にまでは回らない。



だから、何も考えられない。
ぽたり、と頬に何かが当たる。


きっと涙なんだろうな。
恐怖で、涙が出たんだろうな。



体は震えているのだろうか、わからない。視界が上手く今は動かせないんだもの。


すべて、貴女で埋め尽くしてるんだよ。
気を抜いたら今すぐ気絶してしまう。いっその事、そうしてしまう方が楽だろう。



でも、彼女はきっとそんな私を家に持ち帰るのだ。だったら、耐えなきゃいけない。



その細い綺麗な憎い白い指が、私に触れる前に、



「久しぶり、元気にしてた？」


『！！』


開口一番、驚くほど早く彼女は私の目の前に来ていた。
驚くほど早く乾いた音が部屋に響いた。


驚くのも一瞬で、左に曲がった首が痛い。
いまやっと、右頬の痛みで生き返ったような気がした。


キヨ「！？………ッ、おい！！！！」


キヨの大声と先程の衝撃で、また全てがひっくり返った。

『…………ぁ…』


ぺたん、と床に崩れる。
立ち上がろうと床にそえる手も、力が入らない。



あぁ、やってしまった。
これでは彼女にまた、……また


『ごめ、…なさ』
「弱いねえ、すっごく弱い。………変わんないねぇ」


にこりと笑う。
目は笑っていなかった。


見下す彼女の目は真っ黒で、もう全てを壊してしまうような顔をして。
震えて怯えてなにもできない私を、ただただ見ていた。



「いいよ、別に。変われだなんて言ってないし。

……独り暮らしだって？」



顔が曇る。







………あ、やばい



『や、……め…や』





「＿＿＿＿愛されてるねぇ」




私達は、『愛』を特別視しすぎたんだ。
だからやめて、その手を下ろしてお姉ちゃん。



うまく呼吸の出来ない口は苦しくて。
振ってくる手をどうする事も出来ないで、一瞬にしてプツリと全てが黒に染まった。


……あぁ、私はどうなったのだろう。

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