【実iｼ兄i者】だから、君は俺の＿＿＿【ky】

君は　77。※ ページ34

『……あ、チャイムだ』


4校時終了のチャイムが鳴った。という事はいまから昼休みだ。
レトさんは出張なのもあり、忙しくて今日のお弁当はなし。


……つまり、購買に行かなければならない。
言ってしまうとあまり人には会いたくないのだけれど仕方がない。食欲という欲 求には勝てませんよ、人間は。


特に歳をとっているわけでも無いが重たい腰を上げて蟹部屋から出る。鍵をかけてしっかりとポケットにしまうとまっすぐ扉へと歩き出す。



けど、途中で扉の向こうに人影。


『(あれ、二人だ……手当て、かな？)』


私のクラスはサッカーだったし、怪我をした人がいるのかも知れない。
一歩、片足を前に踏み出す。


＿＿と同時に扉が開いた。


その人を見た瞬間天と地がひっくり返った様な気がした。力の入らなくなりそうな所を踏みとどまった私を誉めてほしい。


私はついさっきまで一歩、『前』に足を出した事を疑いも、後悔もしなかったけれど、一歩、『後ろ』に戻していたらどれだけ違っただろうか。


……私は選択を間違えた。



キヨ「本当に姉弟なら大丈夫みたいっすね…Aも立ってる」


『…………ぁ…え、』


2回、間違えたのだ。




にこりと微笑む姉の顔は変わらない。
目を細めていてくれるのがありがたかった。その、丸い目を私に向けないで、写さないで。



力が抜けそう、倒れたい、崩れ落ちたい。喉が一瞬にして渇いてしまった。あれ、声ってどうやって出すんだっけ？


目を大きく見開いて、もう足は地面に縫い付けられたように動かない。目も、閉じて、見ないようにしたいのに。体が思うように動かない。



あれ、息って、呼吸ってどうするんだっけ。
あれ、あれ、苦しいよ、どうするの？



『………』


ひゅ、と喉が鳴った。
声は出ない、風の音。



レトさん、レトさん帰ってきて。
お姉ちゃんと、離れさせて。



頑張ろうなんて決めてたのに、会ってみるとやっぱり怖くて。
私はまた逃げ出そうとする。



でも姉の口は確かに動いた。




逃 げ な い で ね




それが何を意味するかわからないほど、私は子供ではない。

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