【実iｼ兄i者】過去の君と、未来の私。【ky】

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『………。』

あの後、キヨさんに会うのが怖くて私は逃げる様にそこから去った。
焦ったように皆引き止めてくれたけど、私はそこまで強い心を持っているわけでは無いので笑って断ると、

「流石に嫌々引き止めるのも悪いよ。ねぇ、こーちゃん。」

いち早く私の気持ちを察してくれたフジくんがこーすけくん達を私から離してくれる。私が笑ってお礼を告げると、笑顔で見送ってくれた。

あれから頭の中にはいつもキヨさんの言葉が浮かぶ。
あんなに突き放されたのに、気になってしまうのは。わたしの右手に握られているスマホの中に、彼の連絡先が残っているから。

…あんなに嫌そうにしてたのに、なんで交換なんかしたんだろう。
しかも自分から。

考えれば考えるほどわけがわからない。
何回も電話かメールを送ろうとしたがそれも無理な話で。もしかけた後にいつもの声を、いつもより低い声を聞くんだと思うとゾッとした。

「……どうした？」
『ん？…あ、ちょっと考え事！急にごめんね』

今と変わらないその声でも、君からは暖かさを感じて胸がじんわりと暖かくなる。
昔の、キヨくんは違うんだ。私を嫌わないで優しくしてくれる。

…なんて、昔の彼にばかり甘えてしまう私はきっと愚かなのだろうけど。
楽しそうに、いろんな事を話してくれる君が大好きだ。その言葉に深い意味はきっとない。

「あ！そう言えば！！」
『？なに、キヨくん？』
「最近そっちの俺に会わなかった！？」

予想外の言葉に、私の口からは乾いた小さい言葉が漏れた。
それに気付かず嬉しそうに、興味があるように、君は続ける。

「いやー！この前Aが買い物に行ったって言ったじゃん！だから俺もその日に買い物行こーってメモしてたから、覚えてれば会えたかもなーって思って！」


ねぇねぇ会えた！？
弾んだ声に微笑むなんて、今は出来なかった。
フラッシュバックされた様にキヨさんの言葉が脳内を巡る。
……会えた、けど。

『う〜ん…残念ながら、会えなかったなぁ。』

精一杯、残念そうな声を作って。
私は君に嘘をついた。

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