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「……じゃ、じゃあ、出発します」
結局、そんなおどおどした言葉で、私は自転車のペダルを漕ぎ始めることになった。
二人分の体重なので、ペダルが幾分重くなる。
まあ、こういうケースで、定番のやり取りといえば、それを『意外と重いんだね』なんて天宮に指摘して、彼を怒らせるという例のあれだが、それも私はやらないことに決めている。
それに、重いというほどではない。
歌詞さんとそらるが住む学習塾跡までは、それほど時間はかからない――二人乗りでも、私が全力でとばせば、一時間とかからないだろう。
……段差があるたびに、私の背中がものすごいことになるのだが、それについてはなるたけ意識しない方向で行く。
アスファルトの地面、わざと段差のある部分を選んでハンドルをコントロールしたりはしない、私は淑女だ。
いや、しかし、どうだろう、わざと段差を選ぶのはよくないが、進んでいるコースにたまたまある段差をあえて避けないというのは、淑女としてはセーフなのか……？
「大変だよね、蒼音ちゃんは」
天宮が、しばらくしたところで――恐らくは人生初めての、そうでなくとも六歳を過ぎてからは初めてだろう二人乗りに、ある程度慣れただろうところで、私に向かって、そんなことを言ってきた。
「色んな人の、色んな面倒、見なくちゃいけなくって」
「色んな人？」
「相川くんとか、渉くんとか、月崎くんとか、昨日の男子中学生、椎名くんとか……、あはは、男の子ばっかし」
「うるさいよ」
「全部――怪異がらみだったんだね。思い出した」
天宮は言った。
それは、思い出したというより、思い至った、のだろうけれど。
「なんだか、まだ中途半端な感じだけど……、そうだよね。
相川くん、そんな急に、病気が治ったりするわけないよね……」
「…………」
「始まりは、春休みにAちゃんが吸血鬼に襲われたところ、か……あそこから全部が始まったんだね」
「怪異自体はずっと、当たり前のようにそこにあるものであって――ある日突然、現れたわけじゃない、らしいけどね」
専門家、伊東歌詞太郎に言わせれば、だけど。
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灰猫(プロフ) - きゆかさん» 初コメありがとうございます！ヮー！！更新遅くてすみません……！！これからも読んで頂けると幸いです！！ (2022年9月7日 21時) (
レス) id: 0b53369cd7 (このIDを非表示/違反報告)
きゆか(プロフ) - 初コメ失礼します、更新うれしいですありがとうございます…！！いつも楽しく読ませていただいてます！これからも応援してます✨ (2022年9月7日 20時) (レス) @page48 id: 533f2abba6 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - realさん» わー！いつもありがとうございます！！これで化は終わりなのでせめて最後まで頑張ります！！ (2022年8月15日 0時) (レス) id: 0b53369cd7 (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - 毎回コメント失礼します。あ、めちゃくちゃ待ってましたキャットターン()今回も最後まで楽しませて頂きます！ (2022年8月10日 19時) (レス) id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年8月2日 17時
