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「気心の知れた後輩が相手とはいえ、自分の彼女のことを褒めるのなんて気恥ずかしいから、僕なりの照れ隠しだよ」
「照れ隠しなら、普通に恥ずかしいって言って欲しいところだけどね……あ、そうだ、相川」
私は声を潜めて、運転席の相川母に聞こえないよう配慮をしながら、相川に話題を振る。
「じゃあもう一つ、月崎のことなんだけど……」
「お母さん。Aちゃんがお母さんに内緒話があるらしい――」
「真冬くん！」
目敏いな、こいつはもう！
私の苛めどころを決して見逃さないもんなあ！
「志麻くんがどうかしたの？」
「あいつはどうしてあんなにエ ロいんだ」
口元を手で隠しながらの会話。
野球のバッテリーみたいだが、相川母からバックミラーの後方確認で唇を読まれることまで考えると、こうせざるを得ない。
「エ ロい？ 志麻くんが？」
「うん。中学生の頃からああだったの？」
「うーん。中学生がどうとか言うより……そもそも、志麻くんって、エ ロいかな」
「違うっての？ あの歌詞さんですら、月崎のことはスポーツキャラじゃなくてエ ロキャラだと認識していたけど」
「そうかな。それは伊東さんやAちゃんと言った、男性に対して貞淑さを求める側の視点から見るからそう映るんじゃない？
一昔前の理論だね。あの子はただ、自分に正直なだけだよ。度を越しているとまでは思わないけれど」
「そうなんだ……」
そういうものなのかなあ。
よくわからん。
「Aちゃんも、機会があれば、中学生以上を対象とした少女漫画やGL小説を読んで御覧よ。志麻くん程度をエ ロいなどとは言っていられなくなるよ」
「そうか……いや、読むことはないと思うけど」
特にGL小説。
読んだら色々と終わりそうな気がする。
「そうなの？ でも、僕としては、僕の可愛い後輩がエ ロいなどという偏見に見舞われているのを、看過できないね」
「看過できなきゃどうするんだよ」
偏見っつーかさ。
私が被害者くらいの気持ちでいたんだが……駄目だ、こいつに月崎のことで相談しても、相川は無条件で無制限に月崎の味方をするらしい。
人質なのに……。
ていうか、こうなると私が人質なんじゃないか？
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
