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「そんな本物に及びもつかない、底辺を這い蹲るAちゃんは、こつこつと努力に努力を重ねるしかないんだよ。
だから、これからは毎日、僕の家でお勉強ね」
「はいはい……そうさせてもらうよ」
「はいは三回だよ、Aちゃん」
「はいはいはい！……って、なんでそこまでノリノリのテンションを要求されるんだよ！」
「それくらいのやる気は見せて欲しいな。なんといっても勉強場所として僕の家を提供するのだから」
「そうなんだ……」
「なんなら、Aちゃんの家でもいいけれど」
「私の家って、あんまり勉強しやすい環境じゃないんだよな……弟がうるさいから」
「たまになら、志麻くんの家でもいいね」
「何故ここで月崎が出てくる？」
「Aちゃんの勉強を見てあげるのと同じように、あの子とも少しは遊んでやらなくちゃいけないんだよ。そういう約束をしたから」
相川は、強いて平坦な口調でいった。
強いて平坦にしたと、わかる口調だった。
……こいつ、私に対してはあくまで性格の悪い人間だけれど、月崎に対してだけは本当にツンデレだと言えるかもしれないな……。
まあ、人質なんだけど。
月崎志麻。
「あの子は勉強面の心配はいらないみたいだけれど……Aちゃんだって、志麻くんとは遊びたいって思うでしょう？」
「そりゃね。面白い奴だし」
ちょっと面白過ぎるけれど。
それに。
「度が過ぎるくらいに私のことを慕っているのが、どうしてなのかよくわからないけどね……あいつ、ちょっと私のことをいい風に捉えすぎている感じがあるぞ」
「それについては僕の責任もあるかもしれないね」
相川は言う。
「Aちゃんが溺れている子供を助けたことや、日曜日にはいつも老人ホームへボランティアに行っていることを、教えたから」
「嘘ばっか教えてんじゃねえか！」
「冗談だよ。ありのまましか伝えてないよ」
「ふうん……そうなのか」
「僕がいうありのままとはつまり悪口ということだから、志麻くんがAちゃんを慕うのはあくまで志麻くんの判断ということになるね」
「…………」
悪口を吹き込んでるんだ……。
やめてくれないかなあ。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
