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「頭のいい人間は勉強する前から頭がいいんだよ。成績って言うのは、要するに理解力と記憶力のことなのだから」
「はあ……あ、でも、それでいうなら天宮は、勉強しなかったら頭が痛くなるとかなんとか、そんなことを言ってたけれどね」
「天宮くんがしている『勉強』は、Aちゃん、僕達がいうところの『勉強』とは、残念ながらランクが違うんだよ」
相川は言った。
あえて少し間を空けて。
「天宮くんは、本物だよ。僕達とは世界が違う」
「……ふうん」
お前から見ても――そうなのか。
隔絶があるのか。
学年七位と、学年一位。
同じ一桁なのに、そこにはそれほどの差異が。
「本物――ね」
「化物――と、言ってもいいかもしれないね。だって、はっきり言って気持ち悪くない？
あそこまで頭が切れる人間って。機知に長けているなんてものじゃないよ――」
相川の、いつもの毒。
という感じではなかった。
天宮に対しては――この男、常にどこか、そうだ。
嫌っているわけではなさそうなのだが――
変な距離を置いている。
「僕達――って言ったね」
「うん。僕達、だよ。Aちゃんから見れば、僕と天宮くんが同様に見えるみたいに――天宮くんから見れば、僕もAちゃんも同じレベルだと思うよ」
「そうなのか」
「そう。この上なく屈辱的なことにね」
「屈辱的なんだ……」
しかも、この上なく。
本当に私を凹ますのが好きなんだな。
「けど、天宮だって常に満点ばかり取れるわけじゃないでしょ？
いや、まあ、大抵は満点ばかりみたいだけど……」
「天宮くんが満点を取れない場合、それは試験問題の方が出来損ないなんだよ。……ただ、どうなのかな。
それって、どれくらいのプレッシャーになるのかと思うと……あまり素直に羨ましいとは言えないよね」
「プレッシャーか……」
「あるいは、ストレス」
「ストレスね」
天宮翔太。
異形の羽を、持つ少年――
「かと言って、そんな理由で僕達が天宮くんに同情するのも、筋違いだけれど」
と、相川は「それはそれとして」なんて、話の筋を元に戻した。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
