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「印象と書こうとして印度象と書いてしまうほどお馬鹿なAちゃんを、我ながらよくぞここまで育て上げたものだよ」
「そんな間違いはしたことねえ！」
「失点も、どうやらケアレスミスが多いようだし……ふうむ。その調子なら、Aちゃん、もっと上を目指せるかもしれないよ」
「上を――ね」
大学受験。
進路、か。
「Aちゃんさえよければだけれど、これからも、僕がお勉強、教えてあげてもいいよ」
「それは――」
実際。
相川が推薦を受けようとしている国立大学を、こっそりと視野に入れていることを、今はまだ、とてもじゃないけれど、彼に言えるような段階ではないが――だからと言って、ここでその申し出を断る理由はない。
「――願ってもない話だね」
「へえそう」
おすまし顔で、それだけいう相川。
口の堅い天宮には、重ねに重ねて口止めをしておいたこともある、私の思惑があいつから相川に伝わっていることはないだろうが、案外、私の思惑なんて、この男にはお見通しなのかもしれない。
そう思った。
まあ、それはそれで、いいだろう。そうだとしても、私が私の口からそれを出すまで、相川は、待っていてくれるつもりのようだし――以心伝心って感じで、悪くない。
「…………」
それよりこいつ、右手で私の太ももを、触るだけじゃ飽き足らず、内ももにかけてまで撫で繰り回し始めたんだが、これはどういう意味を持っているのだろう？
痴漢行為じゃないのか、これ。
母親のいる前でするようなことなのか？
……まあ、正確には母親の後ろだけどさ。
「じゃあこれからは毎日、僕の家でお勉強だね」
「ま、毎日っ!?」
そんなの、以心伝心してないぞ！
え、いや……？
でも、それくらいはしなくちゃ駄目なのか？ でも毎日って……毎日？
私は一応、学校でも勉強してるんだぞ？ 更に放課後も、日曜日もってことなのか？
「何。どうしたの？ Aちゃん」
「い、いや……頭のいい奴は、やっぱそれくらい勉強してるもんなんだなあって」
「いや？ 僕はそこまではしてないよ、面倒臭い。
そんなの、Aちゃん向けのプログラムに決まってるじゃない」
「………………」
天才肌……。
学年七位の人間が、今、勉強をするのが面倒臭いって言った……。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
