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全く。
よし、反撃を試みよう。
たまには相川の凹んだところを見てみたい。
「お前は、私のどういうところが好きなの？」
「優しいところ。可愛いところ。僕が困っているときにはいつだって助けに駆けつけてくれる王子様みたいなところ」
「私が悪かった！」
何故反撃しようなどと思ってしまったのだろう。
この分野に関しては一日の長どころか千年の長があるこの性悪男に対し、こともあろうか嫌がらせで対抗しようだなんて……。
平坦そのものの相川。
この男に感情はないのだろうか。
こっちは、ただの嫌がらせ返しだとわかっていても、そんなことを言われて、心臓がばくばくになっていると言うのに……。
「わからない……どうしてなんだ……どこでどう選択肢を間違えてしまって、私はこんな茨の道を歩んでるんだ……」
「いいじゃない、茨の道。綺麗な薔薇の花が一杯咲いている道を優雅に歩いているイメージで、とてもゴージャスでビューティフルだよ」
「いい解釈をしてんじゃねえ！」
「薔薇の花言葉は――愚かな女」
「嘘をつけ！ 適当なことほざいてんじゃねえ！」
「そういえば」
と、相川は言った。
自分の都合でぽんぽん話題を変える奴だ。
「そういえば、ゴミ……いや、Aちゃん」
「今お前、自分の彼女をゴミと言いかけたか？」
「何を言っているの、いわれのない言いがかりはやめて欲しいな。
そんなことよりAちゃん、この前の実力テスト、どうだったの？」
「あん？」
「ほら、僕が、僕の家で、二人きりで、昼となく夜となく、散々面倒見てあげたじゃない」
「………………」
何故わざわざそんな言い方をする……。
母親のいるところで、母親不在のときに家で二人きりになった話題など……。
「テストは先週末には全て返ってきたというのに、Aちゃんはその話題には触れたがらないから、これは酷い散々な結果だったのかなと思って今日まで興味のない振りをしてきてあげたのだけれど、でも、今日、天宮くんに少し聞いたところ、そんな悪くはなかったらしいじゃん？」
「天宮？」
「あの子、さすがに口が堅いから、具体的には聞き出せなかったけれど、赤点だったとするなら教えてくれたはずでしょ」
「………………」
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
