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勿論。
相川が月崎に対し、負い目や引け目を感じているのは事実だろう――また、相川を巡っての、私と月崎との恋敵同士としての争いは、相川も知るところだ。
だから、私と月崎とが仲良くなることが、相川にとってそういう意味を持つことは、それなりにわからなくもないが――しかし、それだけじゃない意味合いが、今の相川の言葉には、あったような気がする。
昨日聞いた、天宮の言葉が思い出される。
相川くんから見たら、結構不安だと思うんだよね――
その言葉が含む、その意味合いは――
この男は。
一体何を、考えているのだろう。
「これで志麻くんは、Aちゃんに対して人質としての価値を持ったね」
「凶悪なことを考えてやがった！」
人質!?
日常会話で人質って言ったか、こいつ！
「可愛いよねえ、志麻くんは……ところでその可愛いあの子は僕の言うことならどんなことでも喜んで従うのだけれど、それについてAちゃんはどう思うのかな。
関係ないけれど、可愛い男の子が下半身だけ裸になって四つん這いで校内を散歩しているところとか、見たくない？」
わざとらしい憂鬱さをまとって、ため息混じりにそんな剣呑な台詞をはく相川……こんな非暴力的な、静寂をまとった脅迫が実在するだなんて、平和な国で生まれ育った私はこれまで思いもしなかった……。
相川真冬。
今はっきりしたけれど、お前はツンデレでもなんでもねえ、普通に性格の悪い人間だよ……。
「おや失敬だな、Aちゃん。そんなことを言われたのは、僕は初めてだよ」
「そうなの……？」
「どころか、それとは全く真逆のことをよく言われるくらいよ。『お前は本当にいい性格してるよ』って」
「それは嫌味で言われてるんだ！」
それでいいなら私だって言ってやるよ！
お前は本当にいい性格をしてるよ！
「なんだって……？ あの人達が僕のことを騙していると言うんだ。彼らの言葉を疑うなんて、いくらAちゃんの言うことでも聞き捨てならないね……」
「自分の悪口を言ってる奴らを庇うなー！」
とか。
この辺りの会話は、ただの冗談だ。
互いのセンスが試されている。
「というわけで」
何がというわけでなのか知らないが、相川はそこで再度、仕切り直した。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
