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ついつい何を企んでいるのかって思っちゃう。
ものすごく裏がありそう。
ていうか裏しかなさそう。
両Ｂ面だ。
私がここで間抜けに口を開けたら、ひょいっとフェイントをかけて、私のことを笑いものにする気じゃないのか。
「どうしたの？ Aちゃん。あーん、てば」
「…………」
いや……。
自分の恋人のことを疑ってどうする。
相川は確かに意地悪だが、そこまで酷いことをする奴じゃない。
付き合い始めて一ヵ月、まだまだ長い付き合いだとは言えないが、それでも、それなりにお互いのことは理解できているはずだ。
信頼関係は成立しているのである。それを自ら壊すような真似をしてどうする？
私は相川の彼女なんだ。
「あ、あーん」
口を開けた。
「えい」
相川は白米を、開けた口のちょっと右側、私の頬に押し付けた。
「………………」
いやいやいや。
わかりきってたオチではあるけれど。
「ふ、ふふふ」
笑う相川。
腹の立つ、静かな笑い方だ。
「ふふふ……あはは。はは」
「……お前の笑顔が見れて私はとても嬉しいよ」
昔は滅多に笑わない奴だったのに。
今もこういうときにしか笑わないけれど。
基本的にはとにかく無表情なんだよな。
「Aちゃん、ほっぺたにご飯粒がついてるよ」
「お前がつけたんだよ」
「とってあげる」
一旦箸を置いて、直接手を伸ばしてくる相川。私の頬から、自分で塗りつけたご飯粒を、丁寧な仕草で、一粒一粒、つまみとる。
うーん。
これはこれで……。
「はい、とれた」
と言って。
ぽいっと、脇のゴミ箱に、その米粒の塊を捨てた。
……捨てるんだ。
目の前で捨てるか……。
いや、別に食べるとは思ってなかったけども。
「さて」
と、手際よく、相川は仕切りなおす。
なかったことにされた感じだ。
「デートをします」
繰り返した。
しかし、相川はそこでどうしてか、「ううん」と、悩むような仕草を見せる。
首を傾げて、なんだか思案中だ。
「違うなあ。こうじゃない。デートを……」
「……？」
「デートをして……いただけませんか？」
「………………」
「デートをし……したらどうな……です……」
「……………………」
こいつ……！
ものの頼み方が本気でわからないのか……!?
驚きだ。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
