歌物語［化］しょうたキャット (ページ3)

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語弊がある言い方になるかもしれないが、それは、私がゴールデンウィークに知った、彼の家庭の背景を思えば、信じられないことだった。

ゴールデンウィーク――四月二十九日から五月七日の日曜日までの九日間。

私にとって春休みを地獄とするなら、それは悪夢のような九日間であり、当の天宮翔太にしてみれば、既に忘れ去っている記憶である。

夢とは大概忘れてしまうものだという意味でいうなら、やはりそれは悪夢というべきなのかもしれない。

　九日間。

　彼は猫に、魅せられた。

　私が鬼に襲われたように、彼は猫に魅せられた。怪異にはそれに相応しい理由がある――この場合、彼が抱えていた家庭の不和と歪みこそが、それに相応しい理由だったというわけだ。

そう、誤解というなら、それこそが完全な誤解だった。いい人間は幸せな人間で、悪い人間は不幸せな人間だなんて、そんな単純な二元論で、私はそれまで、世界を捉えていたのかもしれない。

不幸せだからこそ、善良にならざるを得なかった人間がいるだなんて――その程度のことにすら、私は頭を回すことができなかったのだ。

　それなのに。

　天宮翔太は私に手を差し伸べてくれた。

　あの春休みだって、彼には、私を助けている余裕なんてなかったはずなのに――それなのに彼は、私をどん底のどん底から、引き上げてくれた。

　私はそれを忘れない。

　この先、たとえ何があっても。