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「……それ、逆なんじゃないの？」
すると、椎名は不思議そうに言った。
「だって、Aお姉ちゃんは、被害者なんだから――」
「加害者だよ」
私は椎名の言葉を遮って、言った。
「そらるの件に関しちゃ、本当にね――椎名、お前が被害者であるって以上に、加害者なんだ。
まあ、そのあたりの突っ込んだ話は、ちょっと勘弁って感じなんだけど――まあ、その件に関しちゃ、少なくとも、そらるを責めるのは、やめてやって」
「あ、うん……」
頷きはするものの、どこか不満そうな椎名だった。
まあ、椎名からすれば、私とそらるとの関係がよくわからないのは、それは無理もない。
それは私自身にさえ、よくわからないことなのだから。
わかっているのは一つだけだ。
私は一生を、そらるのために費やさなければならない――それがそらるに対してできる、加害者としての、唯一の償いなのだから。
けれど――仕方のないことだけれど。
それでも、私は思う。
思ってしまう。
あの吸血鬼の美しい声を、私はもう二度と、聞くことができないのだろうか――と。
「まあ」
なんだか重苦しくなり始めてしまった雰囲気を打破するように、私は強いて明るい口調で、椎名に言った。
「椎名は、歌詞さんにもそらるにも、もう会わずに済むってのが、一番いいのかもしれないね。
怪異について知ってしまった以上、確かにこれまで通りってのは難しいかもしれないけれど、でも知っているからこそ、避けられるってことはあるでしょ」
「あ、うん……でも、伊東さんにも、お礼を言わないと……」
「んー。どうも、どうやらあいつ、そういうのが苦手っぽい感じなんだけど……でも、そうだね。
会わずに済むのが一番って言っても、それもなんだか寂しい話か。折角縁があって出会ったんだから」
怪異が結ぶ縁というのも、ぞっとしないが。
……いや。
そうでもないか。
私と天宮、私と相川、私と浦田くん、私と月崎――それらは全て、怪異で繋がった縁だ。それをぞっとしないなんて、言うべきじゃない。
ならば椎名との再会も、またそうだろう。
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
