ページ ページ13
あの性格の悪い男が、椎名の件に関してだけ、妙に甘い対応を見せていたことが、私はやはり、気になっているのだ。
そんなことはないとは思うが、もしかして、と思うと、椎名を一人であの廃ビルにやることは避けたい。
伊東歌詞太郎、ショタコン疑惑……。
「そ、そんなこと……ないと思うけど」
「うん。まあ、それはなくとも、釘を刺されたところだしね。気軽にあいつに頼ってばかりいるわけにもいかない――ドラえもんの秘密道具ばかりに頼ってると、のび太くんみたいになっちゃう」
「そう……だね」
椎名は頷く。
「実際、伊東さんがくれたあのお守り、本当にドラえもんの秘密道具みたいだったもんね……。うん、天才ヘルメットと技術手袋みたいだった」
「だからどうしてわざわざ大長編ドラえもんにしか登場していないようなマイナーな秘密道具で例えるんだ!? タケコプターとかどこでもドアとかで例えろよ！」
「欲しいところに欲しい突っ込みを入れてくれるよね、Aお姉ちゃんって……」
と、感心した風の椎名。
その眼には尊敬の光が宿っている。
こんなことで尊敬されても……。
「そう言えば、Aお姉ちゃん」
「なんだよ」
「ジャイアンは映画版においてやけに人間的に成長した性格のいいキャラになるってよく言われるけど、それはむしろのび太くんこそ指摘されるべきことじゃないかな？」
「なんだそのわけのわからない無茶な振り！」
「え……でも、オレ、そんな脈絡のないこと言ってないと思うけど」
「確かに話は繋がっているが、それは繋がっているだけだ！ しっかり横道に逸れてるんだよ！
大長編ドラえもんについての話をここで拡げる理由がどこにあるんだ！」
いやまあ確かに、映画版におけるのび太くんの成長具合と言ったらジャイアンの比じゃないけれど！
「スネ夫くんだけだね。いつまで経ってもどんな場合でも成長しないのは」
「まあ、ガキ大将の一の手下というあのポジショニングは成長するにしても堕落するにしても、キツいところがあるよね……って、だから何の話をしてるんだよ！」
そう言うと、椎名は黙ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：灰猫 | 作成日時：2022年7月24日 23時
