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高校2年の、6月。
委員会終わりでやっと帰れると思えば突然の雨。
朝はすっきりした青空だったから、傘なんて持ってるはずもなく。
友達も早くに下校してしまい、ただ雨が止むのをまつしかなかった。
下駄箱近くでスマホをいじりながら突っ立っていると、誰かに声をかけられた。
??「……あの、」
「……はい……?」
スマホから顔を上げると、そこに立っていたのは優しそうな顔立ちの男の子だった。
??「……もしかして、傘、ないんですか?」
「ぁ、……はい。うっかり、忘れちゃって」
苦笑いで言葉を返すと、男の子は考え込んで言った。
??「……傘、一緒に入ります?」
「……え、?」
思わずひっくい声が出たのをよく覚えてる。
「……いやいや!!申し訳ないので!!」
??「このまま帰ったら風邪ひきますよ、」
「えっと……とにかく、ほんとに申し訳ないんで。」
??「ほんまにええん?これからしばらくずっと大雨らしいけど、」
ぐっと返答に詰まる。
さすがに私もずっと学校にいるわけにはいかないし、しかも両親は今日家を空けていて迎えも来て貰えない。
「……お邪魔しても、いいんですか?」
??「あなたがいいなら。俺は構わへんよ」
「……失礼します、」
??「どうぞどうぞ。」
よく考えたら見ず知らずの男の子と相合傘なんて、当時の私は思い切ったことをしたと思う。
放課後だったせいかほとんど生徒も残ってなかったし、大雨だから仕方なかったんだろうけど。
思いもよらない帰り道は、沈黙で気まずくなる――と思っていたけど、そうでもなかった。
??「そういえば、自分何年なん?」
「2年4組だよ」
??「俺も2年やで!2組やけど。名前は?」
「倉田A。」
良規「Aちゃんか。可愛らしい名前やな。俺は、正門良規。」
「……正門くん。」
良規「なかなか珍しい名字やろ笑仲良くしてな」
「こちらこそ」
今思えば、正門くんは沈黙にならないよういろいろ話題を振ってくれたのかもしれない。
つくづく優しい人だ。
「……あ、私ここで大丈夫。」
良規「ほんま?Aちゃん大丈夫?濡れてへん?」
「私は大丈夫。でも、正門くんの方が……」
良規「俺はええよ。そんな濡れてへんし、めったに風邪なんか引かんから」
そんなことを言う正門くんの右半身はほとんど濡れていた。
私がいなければ、正門くんはあんなに濡れることなんてなかったのに。
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作者名:かるぼなーら | 作成日時:2024年3月25日 23時