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「……え、？」
正門くんは傘の柄をぎゅっと握りしめる。
私を見つめるその目は、どこか怯えてるように見えた。
良規「……ぁあ、いやぁ、その……ちょ、ちょっと気になったんよ、……あんま気にせんでな！！」
急にあわあわとしたような口調で言葉を並べたてる。
その慌てっぷりに思わず笑みが零れる。
「……会いに行ってないよ。普通に観光しただけ、」
会ったことは会った。
だけど、東京に行ったのは彼目的というわけじゃない。
……別にそこまで言う必要ないよね、
良規「……そっか。」
そう言う彼の表情は、どこか安心したようだった。
「……じゃあ、私はこれで。」
良規「……おう。またな、」
「うん。今日は迎えに来てくれてありがと。」
良規「ええよ。俺が勝手に来ただけやし。……いつでも言うて、俺、迎えに行くから。」
「……うん。ありがと。」
私が素直にお礼を言うと、正門くんはニコッと笑って歩き出した。
さっきより強くなった雨のなか、傘をさして歩く背中を眺める。
「……正門くんの、ばーか。」
そんな私の呟きは、雨に打たれて消えた。
二日ぶりぐらいの家。
ソファーでくつろぎながら東京で買ってきたお菓子を少しだけ頬張る。
また明日から仕事だ。
ちょっとくらい自分を甘やかしてもいいよね。
そんな言い訳を心の中でしながら二つ目のクッキーを口に放り込む。
チョコチップの甘さを噛みしめていると、ふと、棚の上に置かれた写真が目に入った。
重たい体を持ち上げ、ゆっくりと歩く。
棚の前まで来ると写真立てを手に取る。
そこに映っていたのは高校生の頃の私たち。
卒業証書を持ってニッコリとピースを決めている。
懐かしさに思わず頬が緩んだ。
「……」
写真の中の私の右隣りには誠也、左隣には正門くん。
私たちは高校の同級生だった。
相変わらずの顔面の強さは高校の時から変わらない。
当時から女の子たちの注目の的で、皆の憧れの存在だった。
そんな彼らと仲良くなれたときは、本当に自分でも驚いた。
そしてその交友が、大人になった今でも続くとは。
人生なにがあるかわからない。
“良規「……傘、一緒入ります？」”
「…………なんで今思い出したんだろ、」
写真から目線を上げ、窓の外を見つめる。
――――正門くんと初めて会ったのも、こんな雨の日だった。
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作者名：かるぼなーら | 作成日時：2024年3月25日 23時
