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誠也「……ほんとに、旅行に来たん？東京に、」
「……まだ疑ってる？」
誠也「さすがに連絡来たときはびびった、なんでお前おんねんと思って」
「まぁ、でしょうね。」
観光で訪れた東京。
たまたま訪れた居酒屋さん。
たしかこのあたりにすえざわくん住んでたって言ってたよな……と、いつだったか聞いた情報を思いだし、彼に連絡してみた。
お店に入ってきたすえざわくんの顔といったら。
ちょっと笑ったよね。
「誘っちゃまずかった？」
誠也「今更まずいとは言わんわ、てか俺も普通に暇してたしありがたかったけどな」
「じゃあベストタイミングやんわたし！！」
そう言うと「ちょーしのんな！」と頭をこづかれる。
やっぱりすえざわくんは変わんない。
誠也「……ほんまに観光やんな、？」
「いつまで言ってん笑」
あれ？いま関西弁しゃべれてた？
なんてちょっと嬉しくなってたら、
誠也「正門となんかあったわけや……ないよな？」
「…………」
誠也「…………」
急にシンとなるテーブル。
誠也と目を合わせぬよう、メニューが書かれた壁を眺める。
「……誠也枝豆美味しそう、」
誠也「……おい、スルーすんなや」
彼の方に顔を向けると、真剣な、いやちょっと呆れたような顔の誠也がいた。
誠也「なんかあったんやろ、」
「……別になんかあったわけじゃない。」
誠也「じゃあ、なんで。」
私は手元の泡だらけになったジョッキを見つめる。
「……別に、」
「……なんか、ごめん。わざわざ送ってもらって、」
誠也「別に気にせんでええよ。俺かてめっちゃ楽しかったし、」
コートのポケットに手を突っ込み、微笑む誠也。
誠也「いつ大阪戻るん？」
「明日のお昼。明後日から仕事だし。」
誠也「そっか、」
「そっちは？いつ出張終わるの？」
誠也「もうすぐ。やっとそっち戻れるで」
「ほんと？その時はまた皆で集まろ！！」
誠也「せやな笑」
「……じゃあ、またね」
誠也「おう、またな。」
ホテルの入り口前。
誠也の後ろ姿に手を振ってしばらく突っ立っていると、さっきまで止んでいた雨がまた降り始めた。
小雨程度で霧みたいだなとどうでもいいことを思う。
“誠也「正門となんかあったん？」”
なんかあったわけじゃないし、なにもないわけじゃない。
ポケットには誠也に連絡してからずっと電源を切ってるスマホが入ってる。
「……」
彼と出会った時も、こんな雨だった。
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作者名：かるぼなーら | 作成日時：2024年3月25日 23時
