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「…そんなものに興味はありません、さようなら」
「お待ちください、最後まで聞いて下さっても良いじゃありませんか」
「そうですよ。此方もかなり困った状態でして」
「は」
また背後から声がすると同時に、首を這う手──何時の間にかジェイド・リーチ迄もがその場に揃っていた。無機質な手袋の感触がダイレクトに嫌な現況を突き付けている。頭の隅で、あと少しで戻ってくるだろう先輩達の事を考え、息を吐き出す。幸い、戻ってくる気配はない。
「聞くだけ、聞きます」
「あぁ、お優しいですね！助かります」
いけしゃあしゃあと。あくまで此方が
「フロイドが部屋から出て来なくなってしまった理由をご存知でしょうか？」
「…え？」
思考が追い付かない。あのフロイド先輩が、部屋から出ていない──確かに見掛けないな、とは思っていたが──そもそも籠っている事自体今知ったので、知る由もないんだが。部屋に籠るだなんて彼の性分じゃあ先ずあり得ないだろう。
「おや…ご存知でない？貴方が原因ですのに」
「ま、待ってください。僕はそんな事した覚えはありません」
「…そうでしょうとも。少なくともあの時の貴方には
私が原因、とは。
察するに、私の発言の為そうなったと考えて良さそうだが──依然として分からない、心当たりが無い。もしかしたら言われのない事で責め立てられているのかも知れない。だがジェイド先輩の手が首を握っている間は、逃げられる訳がなく。
「あぁ見えてフロイドはキッチリとこなす物はこなします。なので出て来られないとなると、此方も出来る事が出来なくなって困るんですよ」
「…ジェイド先輩の兄弟でしょう、どうにかすれば良いじゃないですか」
「えぇ…何時もであればそうしていたでしょうが──無理なんですよ、テコでも動かない」
──彼が言いたいのは、きっとこうだろう。
『お前が原因なんだから説得しろ』
勘弁してほしい。部屋から出て来ないって事はイコール、彼と密室で2人きりという、有り難くないイベントが発生してしまうのだ。なんとしてでも断りたい。もしかしたら貞操が危険かも知れないのだ──これは先輩達が帰ってくるのを待つしか、と考えた所で横の悪魔は無情にも言うのだ。
「助けを期待しても無駄ですよ、僕が根回ししましたから」
酷く──良い笑顔だった。
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作者名：初心者 | 作成日時：2022年1月5日 23時
