きっと間違いだった。 (ページ12)

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彼は慣れた手付きで紅茶を注いでいく──と、共にキッチンには良い匂いが漂って、それだけでお腹が空きそうだ。これは期待出来る匂いである。

「もし心配であれば、暫くボク達と過ごすと良い。今日目の当たりにして確信したけれど…エースとデュースじゃあ頼りにならないだろうからね」

「余計な遠慮は必要ない──それは、過ぎたら失礼に当たるよ」

注ぎ終わったカップの中を眺めつつ返す。

「じゃあ…トレイ先輩達が良いって言ったらで…」

「…君はどうにも、素直に好意を受け取れない部分があるな」

少し呆れた顔をされたが、溜息を溢すと「まぁ良いか」だなんて。

「きっとトレイとケイトも快諾すると思うが、聞くだけ聞こう」

「すみません…」

「謝るくらいなら提案するんじゃない。ボクも言えた口じゃないけれど、君はもう少し周りに甘えてみるべきだと思うよ…反面教師が此処に居るんだから」

「これでも甘えている方です」

言いながらもティーカップが載ったお盆を持ち、先を歩く。隣に並んだリドル先輩は、小皿やフォーク等が載ったお盆──納得いってない顔だ。が、私は素知らぬフリ。軽く適当な話をして、皆が待っている談話室へ到着した。そうすれば待ち切れないのかエースが顔を出し、顔を見た瞬間、ブサくれた表情。きっと文句が飛んでくるなと思えば──案の定。

「おっせぇよ！腹ペコだわ！」

「あ、エースは要らないみたいです！」

「嘘嘘嘘！嘘だって！」

言いつつ機嫌を取るかの様、私の手からお盆を奪う。足早に皆へ紅茶を配り回るので、それを苦笑しながら眺めれば、ケイト先輩が隣においでと言わんばかりにソファーを叩く。ので、素直に着席。

「確かに遅かったけど、Aちゃんとリドル君、何してたの？」

「あぁ、その事で皆に話がある」

「どうした？」

現在腕を組んでいるリドル先輩から小皿を受け取ったトレイ先輩は、聞きつつタルトを切り分けている。「それが終わったらで構わない」と律儀にも待つので、緊張感のない会話が飛び交った。

「なになに～？めちゃめちゃ気になるじゃん。あ、皆食べる前に撮るからね！」

「またっすか…？」

「嫌な話じゃなければ良いさ」

「勿論だ」

「はい、お疲れ様って事で監督生は大きめな」

「あ、ありがとうございます！」

そして全員に行き渡ったのを確認した彼は

「明日からAも一緒に行動させようと思う」

なんて仰々しく言うのだ。