Q34:約束と勉強会 ページ35
Aさんside.
『私しか読まない』
赤司くんに言ったこの言葉は嘘じゃない。
祖母は本が好きな人だった。
私は小さい頃、体が弱くて、自由な時間がほとんどなかった。
そんなときに、私は本と出会ったんだ。
「私ね、おばあちゃんっ子なんだ。両親はほとんど家にいないから……いつも家には、おばあちゃんとたくさんの本。でも……当時の私はおばあちゃんの本が難しくて、理解できなかった。だから、たくさん読んで、理解しようとしたの。でも……両親はそれを良しとしなかった……」
「どうしてですか?」
「おばあちゃんが周りに溶け込めないのは、本のせいだって。だから、私にはそうなって欲しくないからって、本を取り上げられたこともある」
私は呟くと、赤司くんが読んでいた本を手に取る。
その本の表紙は、タイトルも読めないほどに古びてしまった。
でも、思い出の詰まった大切な本。
「この本……私がおばあちゃんの本の中で、1番最初に手に取って、読んだ本なの」
「俺も、この家だとそれが最初です」
赤司くんの言葉に、私はしばらくして笑った。
赤司くんもおかしそうに笑う。
「……ふふっ。時期は違うけど、初めての本が同じって、なんだか凄いね」
「そうですね。あ、でも……」
赤司くんは呟くと口元に手を添える。
どうしたのかと、しばらく赤司くんを見つめるも、今度は困ったように下を向いてしまう。
「赤司くん?」
「その本は借りられませんよね?」
「え?」
その言葉に私は驚いた。
借りる?
この古びた本を?
でも……赤司くんは本を読み終わったかと聞いた私に、区切りは付いたと言ったが、読み終わったとは行ってない……。
「……迷惑でなければ、先輩の本とそちらの本、お借りしてゆっくりと読みたいんですが……」
「あ……そうだよね」
私は呟くと本を差し出す。
赤司くんは少し微笑むと、本を受け取ってくれた。
「返却はいつでも良いよ。うちにも、勉強以外で立ち寄ってもらって構わないし……好きな本があったら借りてもらって平気だから」
私は赤司くんを見つめて、呟き微笑む。
赤司くんは柔らかく目を細めると、「わかりました」と頷いてくれた。
「じゃあ、勉強と食事にしよう」
「はい」
それから私達は本の貸し出しという約束を交し、遅めの勉強会を開いた。
※
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作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時