Q12:ベンチの喧騒 ページ13
赤司side.
俺はコートに戻って、練習を始めた。
そこに青峰が入ってくる。
「あん?赤司。もう、個人練習始めてんのか」
「ああ。それより、足元にあるボトルを倒すなよ」
「あ?うわっ!危ねぇな……てか、まだ飲んでねぇの?」
青峰はそう言って、俺のボトルを掲げる。
昨日のがあまりに美味しかったから、俺はまだ口も付けていない。
(口振りからするに、青峰はもう飲んだのか?)
俺はボールを抱えて、青峰のそばに腰を下ろした。
「ほらよ」
そんな俺を見て、青峰はボトルを差し出してくる。
「ああ。ありがとう」
「おう」
青峰はそう言って、ボトルを口にする。
そこに緑間と紫原が寄ってくる。
「あれ〜?ベンチにいないと思ったら、ここにいたんだ〜?」
「向こうは先輩が多いからね」
俺はそういうと、ベンチに顔を向けた。
ベンチでは、如月先輩が怪我人の手当をしているようだ。
(なにかあったのか?)
俺は立ち上がると、ボトルを手に如月先輩の元に戻った。
コートから少し出ると、そこは喧騒としていた。
「靴と靴下を脱がせるよ?」
「っ、はい……」
「痛いだろうけど、我慢してね?」
如月先輩はそう言いながら、靴と靴下を脱がせていく。
そこから見えてきたのは、赤く腫れた足首だ。
「思ったより大きいな……誰か、氷水用意して!それと、湿布と包帯!君は担任に知らせるからね」
「……はい」
「そんなに気落ちしないで良いよ。それより、しばらくは痛むと思うから、歩くときはテーピングしてね?テーピングのやり方、わかる?」
「いえ……」
「わかった。やりながら教えるね?」
如月先輩はそう言うなり、制服のポケットから、テーピングに使うテープを出した。
「先輩。いつも持ち歩いてるんですか?」
「赤司くん……一応ね。カバンにも入ってるよ。部員が多いと、怪我の確率も上がるし……」
「そうなんですか……」
「まぁ、よっぽど大きいのは無理だけど……」
如月先輩はそう言いながら、手際よく手当をしていく。
その手際に俺は感心していた。
それと同時に、少しだけ彼女が遠くに感じた。
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作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時