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どこか落ち着ける場所が欲しくて。
一瞬ただの民家かと思ったんだけど。
小さく隠れたように置かれた
「喫茶」という看板を見つけた。
ドアベルの音と共に。
カウンターの中にいる猫背の
シルエットが動く。
「…いらっしゃい。」
綺麗な顔をした男の人だなと思った。
キラキラした目が私を捕らえて。
スッと。自分の目の前の
カウンター席を手のひらで示す。
「こちらにどーぞ。」
促されるままに座る。
メニュー表を貰って見るんだけど。
頭がぼんやりしていてうまく働かない。
「ホットコーヒーください。」
「…かしこまりました。」
なんとなくで決めたホットコーヒー。
男の人がコーヒーをいれる姿を
ぼんやりと見ながら。
頭は教授のことでいっぱいだった。
…嫌われたかな。嫌われたよね。
彼女いるの知ってるくせに。
あんなことしようとして。
…教授が私の気持ちに気づいてたなんて。
「お待たせしました。」
目の前に置かれたカップ。
混乱した頭を落ち着けたくてすぐに手に取る。
ひとくち。
ひとくち飲んだだけだった。
「…あれ…？」
何の前触れもなく。
涙がボロボロ。溢れだした。
コーヒーの中に入ってしまいそうで
慌ててカップを置く。
ちょっ、なんでこんな急に…。
「ん。」
カバンを漁りながら
ハンカチを探す私の目の前に。
男の人がタオルを差出してくれた。
これ、さっきこの人が
テーブル拭いてたやつじゃない？とか。
ちょっと思ったんだけど。
尋常じゃない量の涙に。
そんな考えも吹き飛んで。
急いでタオルで顔を覆った。
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作者名：しほ | 作成日時：2016年6月13日 9時
