コーヒーは苦いんじゃなくて、暖かいんですね。【0617HBD企画】＊完結＊ (ページ3)

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教授が結婚するらしい。

そんな噂が生徒の間で流れた。

彼女とは付き合ってから
もう結構経っているみたいだし。
周りからわかりやすいくらいに
順調で幸せそうだったし。

いずれはそうなるだろうなって。
生徒達も思っていたから。

噂の真偽はどうであれ。
それはもう決定事項のようなものだった。

「教授。この前のレポートを…。」

レポートを提出するために
寄った教授の研究室。

机に突っ伏して眠る教授を見るまでは。

私はもう。いい加減
諦めなくちゃいけないなって。思ってて。

「教授…、こんなとこで寝てたら風邪ひきますよ…。」

…なんでかな。

なんでこんなに好きなのかな。

こんなことしたって。
私だって。教授だって幸せになんかなれないのに。

私は笑って教授の幸せを。
「おめでとうございます」って。
いつも通りに言えばいいだけなのに。

なんでできないのかな。

衝動にまかせて。

眠っている教授に顔を近づけて。
教授の唇と、私のそれがあと少しで重なるっていう時に。

「…ダメだよA。」

ふんわりと。

教授の手の平が。私の顔を遮った。

「教授…おきてたの…？」

「…ごめんね。」

教授の寂しそうな。悲しそうな。
その笑顔を見て。

この人はずっと私の気持ちに
気づいてたんじゃないかって。
直感だけどそう思った。

そして初めて。

教授から明確に。線引きをされた。

頭が真っ白になりながらその場を飛び出して。

がむしゃらに走ってたどり着いたのが。
二宮さんがいるあの喫茶店だったんだ。