コーヒーは苦いんじゃなくて、暖かいんですね。【0617HBD企画】＊完結＊ (ページ1)

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「いらっしゃ～い。」

ベルの音に合わせて、カウンターから
のっそり立ち上がった猫背なシルエット。

…また漫画読んでたな。
いくら暇だからって。

「二宮さん、こんにちは。」

「今日は来るの早かったんじゃない？」

「先生が急に体調不良とかで休講になったんです。」

カウンター席のちょうど真ん中。

私がいつも座る場所。

もう何度もここに座るから、
何も言わなくてもおしぼりとお水が置かれる。

私はいわゆるこの喫茶店の常連客というやつだ。

ここは私の通う
大学から徒歩10分のところにある。
あまり人通りの多い場所に
立地されている訳ではないから
お客さんは比較的いつも少なめ。

喫茶店と示す看板もなんか小さくて。
私も最初ここが喫茶店てわからなかったくらい。

隠れ家みたいな所。そんな印象。

「二宮さんって、こんなにお客さんいない喫茶店で儲かってるんですか？」

「ばーか言ってんじゃないよ。俺目当てで来る客がどんだけいると思ってんの。」

「そのお客さんで賑わってるとこ見たことないんだけど(笑)」

彼は二宮和也さん。

この喫茶店の店長をしている人だ。

自営業で、他にアルバイトとか
雇っている様子もない。
本当に全部1人で切り盛りしているみたい。

お客さんは少ない。

でも、彼のいれるコーヒーが
絶品だということは知っている。

私はそのコーヒーの味と。
二宮さんに救われたんだ。