お付き合いを前提に結婚してください！！！

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＿木製の扉を開けると、からんころん、という温かみのある音色に迎えられる。場所が駅から少し離れたわかりにくいところだからか、人こそ少ない。けどお客さんはみんな、このお店の雰囲気に沿うように落ち着いて自身の作業を進めたり、時間を満たしているみたいだ。確かに、勉強にはもってこいの環境と言えそう。


「飲み物何がいい？買ってくるよ」

「アイスティ………え！？いや流石に私が……」

「最近生徒会の仕事に追われてたから休みたい俺の為でもあるんだ。できれば払わせて？そこまで高価でもないし。」


一週間前くらいからお疲れ気味な気がしたのはそのせいだったのか。…てっきり私が疲労させてるとばかり(その可能性が0とは言えないけど)。席に暑くなり始めたブレザーをかけ、カウンターに並ぶ背中を見守る。今日はびっくりするほど優しくてこっちが困惑してしまいそうだ。…まあ、声をかけてもらった最初から優しいと言われれば、何も言えないけど。
何もしないのも落ち着かなくて、教科書とノート、問題集を取り出す。…国語って正解が不明瞭だから苦手だ。面白い時と面白くない時で気合も変わるし、一つ単元が変わるだけで言語そのものも変わる。さっきコンちゃん先輩はそこが面白いんだよ、と笑っていたが。


「それで、どこがわかんないんだっけ」

「全部」

「らっだぁ以外に言う人いたんだ、それ」


部長も言うのかよ。確かに勉強嫌だーって嘆いていそうなタイプではあるけれども。……正確に言えば把握してないからわかんないところもわからないって感じで、少しずつ解き進めると「なんだ、わかってるじゃん。」と褒めてくれる。一家に一人コンちゃん先輩が切実に欲しい。毎日褒められながらだったら勉強できる気がする。


「…ここ？『清水の橋殿にて京童部といさかひをしけり』」

「え、そこ”はしどの”って読むんですか」

「そうだよ、…板書のノートには読みでるって書かれてるけど」

「嘘お…」

「ふふ、頑張って？」


そう言ってくつくつと喉を鳴らして笑う先輩。困ってるのを笑われてるのか、ただ単に微笑ましいと言う意味でなのかは知らない。後者であれば嬉しい。あといい声で音読してくれるからコンちゃん先輩テスト範囲朗読CD欲しい。言い値で買う。
＿＿そんなふうにして、デート(と言い張る)は無事、復習もできて予習もし、テスト対策は万全に終わったのでした。……先輩、作業のしすぎで倒れないといいけど…

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