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〜♪〜♪
恋人がドイツを離れて数日後、
私は相も変わらずな日常を送っていた。
週に3回ピアノの講師をして、夜はお気に入りの舞台で音を奏でる。
"パチパチパチ"
フロアから贈られる拍手が何よりの褒め言葉。
小さい頃から思い描いていた舞台とは随分違ってしまったけれど、私が辿り着いた舞台に後悔はない。
『リクエストいいかな？』
「はい。」
グランドピアノから一番近いテーブル席に座っているダークスーツを身に纏ったその人は、流暢な日本語で私を手招きする。
いままでにも何度か見かけたことのある、気品あふれるドイツ人男性だ。
『いままでもここには何度も来ていたんだけどね、』
「はい。お見かけしておりました。」
『そうか。今日は思い切ってリクエストしていいかな？』
「はい。」
きっと私の父と同年代くらいのその男性は、とても柔らかく笑う人だった。
「なにに致しましょう？」
『ラフマニノフ…なにか弾ける曲はあるかい？』
「はい。私も好きな作曲家の一人です。」
『そうか。じゃあ、ラフマニノフで一番得意な曲を聴かせてもらおうかな。』
「かしこまりました。」
〜♪〜♪
前奏曲 嬰ハ短調「鐘」
Prelude in C-sharp minor, Op.3-2
セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninoff / 1873-1943)
ラフマニノフが音楽院を卒業した年に書かれた若き日のこの作品は、鐘の鳴り響く音を模倣したと言われている。
中学時代、国際コンクールで弾いたこの曲は、私の一番得意な曲などではない。
決して難易度が高くない、技術をひけらかせないこの曲に苦戦して、何ヶ月もの努力が三位という結果に終わった苦い思い出の曲だ。
それでもいまこの曲を選んだのは、いまの私ならあの頃より上手く弾ける気がするから、
こんなことは独りよがりだろうか、
いま、
私の音はどう聴こえている？
耳を傾けてくれている沢山の人に、
私の音はちゃんと「鐘」に聴こえているだろうか、
"パチパチパチ"
先程より大きくなった拍手が、このフロアに「鐘」が鳴り響いた証。
一番近くにいるその人を見れば、満足気にただ私を見つめていた。
「休憩いただきます。」
支「あ、その前に少しいいかな？話があるんだ。」
「？」
ーーーvorwarts…
＜良くわかんねーけど、今のがいい。俺はね。＞
＜ま、素人の戯言。＞
ーーー
私の音は、どう聴こえていただろうかーー
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いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (
レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは！素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます！同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください！いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(･_･;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：laiz
| 作成日時：2013年10月21日 20時
