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「忘れ物ない?」

篤「んー」

「パスポートは?」

篤「持ちました、」

「気をつけてね。」

篤「はいはい。笑」





まるで練習に行く彼を見送るように小言を言いながら背中について行くけれど、いつもと一つ違うのは恋人が大荷物を持っているということ。





篤「戸締りしっかりね。」

「うん。」

篤「インターホン鳴ってもシカトでいいよ。」

「うん。笑」

篤「車、やっぱやめてタクシーで行けば?」

「大丈夫。運転慣れてきたから。笑」





あと一つ、

彼が私に小言を言うこと。



"本当かよ"、"もうあれセンスの問題でしょ"とブツブツ言いながら靴を履いている彼は、

今日は私よりも小言が多い。



そんな彼の小言も、愛情の裏返しだと分かるから嬉しいのだけれど、





篤「じゃあ、行ってくるわ。」

「うん。いってらっしゃい。」





「「………」」





いつもはそのまま玄関の扉を開けるはずのに、

彼は珍しくこちらに振り向いて、



口をムッとつぐんだまま私に一瞬目線を向けた恋人に、なんだか少し期待してしまう。





篤「寂し?」

「え?……篤人くんは?」

篤「俺?さぁ、」





「「………」」





「「……ふっ、」」





互いの返事を待つ静寂の後に重なった笑い声は、頷く代わりにお互いが肯定をした証だ。





篤「黙んな。笑」

「篤人くんこそ。笑」





クスクス笑いながら

どちらからともなく近づく距離、





暫しの別れを惜しむように、

ほんの数秒間の口付けを交わした。





篤「じゃね。」

「うん。」





玄関の扉が閉まりかけた時、

一瞬合った恋人の瞳は優しくて、





トントンと階段を降りて行く彼の足音を聴きながら、

これから始まる二ヶ月間はきっといつもより刻が過ぎるのが遅いのだろうと、一人小さく溜息を漏らす。





「………」





彼のいないこの部屋はなんだか広く寂しくて、

テレビの横に置いてある写真たてを、意味もなくただ手に取ってみる。





「…ふっ、」





照れ臭そうに顔を歪めているあの日の恋人を眺めながら、もう既に二ヶ月後が待ち遠しくなっている自分が可笑しくなった、

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いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます!同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください!いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(・_・;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2013年10月21日 20時

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