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アパートの階段を登り、女の子のキーホルダーが付いた鍵で鍵穴を回す。
彼が"キモッ"と指で弾いたお揃いのそれを思い出す度、温かい気持ちに包まれるのは毎度のことだ。
「…?」
誰もいない部屋の真っ暗な玄関に灯りをともすと、調度いま想いを馳せていた恋人の靴が雑に脱ぎ捨てられていることに気づいて、
鼓動を高鳴せながら寝室を覗けば、そこには左側にスペースを空けて眠る彼の姿があった。
「…ふっ、」
嬉しさのあまり、気持ち良さそうに寝息をたてている彼の髪をそっと梳かせば、
眉間にしわを寄せながら目を開いた彼が、"変態"と掠れた声でいつかと同じ台詞を放つ。
「ごめん。起こしちゃった。」
"んー"と唸り声をあげながら伸びをした彼は、寒さで冷え切った私の手をギュッと握り、"冷たっ"とあどけなく笑って見せる。
「いると思わなかった。」
篤「なんで?別に休みの日は俺ん家に泊まんなきゃいけないなんて決まりないでしょ、」
"ここでもいいじゃん"と当然のように言う彼に、緩む頬は隠せない。
篤「しかもさ、一個忘れてたんだよね。」
「?」
篤「結構肝心なこと。」
彼に腕をグイッと引かれ、後頭部に掌の温もりを感じる。
一気に距離をつめた彼に視界は埋め尽くされ、
次に私の唇に落とされたのは、
深く長い、少し乾いた彼の感触だった、
篤「ん、持ち越し分。」
「………」
何事もなかったかのように"風呂入ってきな"とポンと頭を叩かれても、不意打ちのキスにただただ顔が熱をもっていくのが分かる。
動かない私に"ふっ"と笑った彼は、二度目の口づけをゆっくり私に落として、
"ふー"と自分を落ち着かせるように息を吐くと、眠る体勢に戻り瞳を綴じた。
篤「早く入って来いって。」
"眠いんでしょ?半目になってるけど"と冗談まじりに笑うのは、彼の優しさだ。
夜の仕事をしていることもあってか、普通の恋人に比べて"そういう事"はかなり少ない方だと自覚している。
そんな私に無理強いしないのも、自分を落ち着かせるように息を吐くのも、全部彼の優しさ。
それでも彼がここに居てくれたのは、
私と同じく、"もう少し一緒にいたい"と思っていてくれたのだろか、
「…ありがとう。」
篤「ふっ、もうそれわざと言ってんでしょ、笑」
深い夜に、小さく笑い合う二人の声が響く、
それだけで私は幸せで、
きっと彼も、同じ気持ちでいてくれている、
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いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます!同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください!いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(・_・;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2013年10月21日 20時