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父「篤人!しっかり守れ!」
攻められる度に叫ぶ父は、何故か彼を"篤人"と呼ぶ。
"家では篤人って呼んでるのよ"とまたこっそり教えてくれた母と、
熱狂的な応援を続ける父の姿を見ながらクスクス笑い合った。
ピッチを走り回る彼の姿は、今まで見たこともないくらいに輝いていて、
少し遠い存在に感じてしまうのと同時に、やはり私はサッカーをしている彼が一番好きだと実感する。
"自分に出来ることをコツコツと"やって来た彼だからこそ、いま、こんなに輝いているのだろう。
父「A、」
真っ直ぐに彼を見つめている父が、優しい声で呟く。
父「彼はこういう仕事をしてるんだから、またいつ怪我をするのかも、試合に出れなくなるのかも分からない。」
「………」
父「沢山の人に見られる仕事なんだ。」
父「いまは大声援に包まれてるけど、何かの拍子でこれが批判に変わるかもしれない。日本でも同じだ。」
ーーーvorwarts…
<彼女にも大分心配かけてしまってて、>
<いらない気とかも遣わせてちゃってて、>
<これからも多分、そういうことがあると思います。>
ーーー
父「これからは一緒に暮らすんだから、彼が辛い思いをしてる時、Aも同じ思いをすることになる。」
「………」
父「それでも自分で選んだ人なんだから、やっぱりやめておけば良かったなんて思わないように、支えてあげられるように、きちんと見ておきなさい。彼の仕事を。」
ーーーvorwarts…
<でも情けないですけど、>
<それに大分助けられてます。>
ーーー
優しく、でも力強くそう言った父は、片時も彼から目を離すことはない。
「…はい。」
"彼が素敵な人なのは充分わかってるんだけど、あんなに有名な人が娘の恋人っていうのは少し心配になっちゃうわね"
先程ピッチを見つめながら冗談まじりに母が言っていた言葉を思い出し、
私も真っ直ぐに彼を見た。
"ピーピーピーーー"
試合終了のホイッスルが鳴り響く。
この日のシャルケは、4-0の快勝だった。
真っ先に私たちを見上げた背番号22のユニフォームを着たその人は、"サッカー選手"。
ーーーvorwarts…
<心配をかけていたらすみません。>
ーーー
でも、
深々と父と母に向かって頭を下げたその人は、律儀で誠実な、私の"恋人"。
4月28日、
サッカー選手、内田篤人を知った日。
私がもっと、彼を好きになった日。
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いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます!同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください!いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(・_・;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2013年10月21日 20時