29 ページ29
4月28日、
両親がドイツにやって来て5日目の今日、
ゲルセンキルヘンにあるスタジアムで、シャルケ対ヘルタ戦が行われる。
<なんとか試合出れそうです。気をつけて来てください。>
そんな彼らしいメールが、今朝父のiPhoneに届いたらしい。
そのおかげで父は、朝からいつになく上機嫌だ。
母「なんだか凄いわね…」
スタジアムに入れば、経験したことのない雰囲気に圧倒されている母。
もちろん私にとっても未知の世界。
こんなに大きい会場も、溢れそうなほどいる観客も、割れんばかりの歓声も、
当たり前だがクラシックのコンサートとは別世界のこの空間に、私もただただ圧倒されていた。
「…うん、」
こんな中日々戦っている恋人を、この期に及んでもまだ想像出来ずにいる。
母「あ、篤人くん出てきたわ!」
それもそのはず、
私はサッカー選手としての内田篤人を、何一つ知らないのだから。
父「いい顔してるな。」
「…うん。」
いまピッチに立っている"内田篤人"は、
本当に私の知っている"恋人"なんだろうか。
いつもと同じ冷静な表情の中にも、隠しきれない闘争心が見える気がして、
それは彼が勝負の世界で生きるプロなのだと、どんなものより物語っているように思えた。
父「今日の試合で負けたら、やっぱり同棲はやめて日本に帰ってきたらどうだ?」
「もう、なんでそういうこと言うの?」
父「別に変なことは言ってないだろ。勝つところもしっかり見せられない男に、安心して娘を任せられないからな。」
父「勝って初めて認めてやる。仕事の出来る男だって。」
「…ふっ、」
"お父さんね、あなたたちがドイツに帰ったすぐ後、スカパーとかCSとか、色んなの契約して来たのよ。"
"夜中に篤人くんの試合見て、寝不足で仕事に行くんだから。"
父「なんだ?」
「ううん、なんでもない。笑」
"あんなに素敵な人に娘を取られちゃって悔しいのよ。なにも文句の付け所がないじゃない。"
"だからわざとプレッシャーかけるようなこと言って、自分が見てる前で勝てたら認めてやるとでも言ってるんじゃない?"
"でも本当はもうすっかり、家で一番の篤人くんファンなんだけどね。"
先程母にこっそり教えてもらった秘密と、ピッチにいる恋人を見て何故か誇らしげな顔をしている父は、
私の中に閉まっておこう。
"ピーーー"
長いホイッスルが鳴り響き、キックオフ、
342人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます!同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください!いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(・_・;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:laiz | 作成日時:2013年10月21日 20時