17 ページ17
堪えきれずポロポロ零れ落ちた涙を、彼が困ったような顔をしながら拭ってくれる。
その温もりに、余計にそれは溢れていって、
篤「だから泣くなって。まじでお父さんに殴られんじゃん、俺。笑」
冗談まじりに笑っているけれど、私の返事を待つ彼の笑顔は何処か不安を隠しきれていない。
心配しなくても、
私の返事はたった一つに決まっているのに、
「……よろしく…お願いします、」
途切れ途切れで不恰好な返事だけれど、
ちゃんと私の気持ちは贈れただろうか、
小さく下げた頭を上げて彼を見れば、ボヤける視界の中確かに安堵の笑みを浮かべる恋人が見えた。
篤「あー…地味に緊張した。笑」
深く息を吐きながらベッドに寝転んだ彼は、私の腕をグイっと引き、胸の中に押し込んで、
「…でもこれじゃあ…私のプレゼントになっちゃう…」
「…私の方が、きっと嬉しいもん、笑」
いまだに涙で途切れ途切れな私の言葉に、耳元で彼が"ふっ"と笑う。
篤「別に俺の欲しいもんでもあるんだからいいでしょ、」
優しく響く彼の声に、ただ黙ってコクンと頷いた。
ーーーvorwarts…
＜ねぇ、まさか歩き？＞
＜さすがにその状態見て、放置できるほど薄情じゃないわ、俺。＞
ーーー
あの日からちょうど一年、
ーーーvorwarts…
＜でもあれだね、この前聴いたやつのがいい。＞
＜篠崎さんが弾いたやつ。録音してくんない？試合前とか聴きたいんだけど。＞
ーーー
思い返せば、
彼と過ごす日々のどれもが"特別な一日"だった。
これからは、
毎日がそんな幸福で溢れるのだろうか、
「…篤人くん…ありがとう。」
篤「ふっ、こちらこそ、笑」
彼となら、
きっと毎日が幸福で彩られる、
そしてきっと、
今よりもっと彼を好きになってゆく、
篤「泣いてないでさっさと寝ろ。笑」
「…うん。笑」
篤「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
3月27日、
彼がこの世界に生きていること、
彼が私を見つけてくれたこと、
そして、
彼が私を愛してくれたこと、
トクントクンと目の前で鳴る鼓動に、"ありがとう。"と呟きながら瞳を綴じた、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 342人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (
レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは！素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます！同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください！いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(･_･;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：laiz
| 作成日時：2013年10月21日 20時
