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「あ、そういえば、」
篤「ん?」
「篤人くんの欲しいもの、まだ聞いてなかった。」
買い物の時、"まだ言わない"と言っていた彼の欲しいもの。
いつもと変わらない3月27日は、彼の言葉によってとても素敵な"特別な一日"になったけれど、
それでも誕生日プレゼントくらいは贈りたい。
篤「あー…それね、」
私の言葉にパッと抱きしめる腕を解いた彼は、少し言いづらそうに上半身を起こしてくしゃっと頭をかいた。
篤「欲しいものっつーか、願望っつーか、」
「うん。」
篤「…別にどーしてもってわけじゃねーけど、」
「うん。」
私もそれに続くように、上半身を起こして彼に向き直る。
篤「…ぶっちゃけさ、この一年良く頑張ったと思うわけ、俺。」
「?」
篤「正直結構面倒いんだよね、練習終わりにわざわざデュッセルドルフまで行くの。」
確かに、30分程度とは言え、極度の面倒臭がり屋な彼が一年間毎週のように家に来てくれたのは、簡単なことではなかっただろう、
もうずっと当たり前になっていたけれど、知らず知らずに無理をさせていたのかもしれない。
「ごめん。」
篤「いや、別に謝んなくていいんだけど、」
小さく頭を下げれば、ばつが悪そうに再び頭をかく。
篤「だからさ、こっち来てくんない?」
「そうだね。今度からは起きたらこっちに来るようにするね。」
ずっとそっぽを向いたまま話していた彼は、苦々しい顔で私を見ると、"はぁ"と深く溜息をつく。
篤「…ね、また空気読めてませんけど、」
「え?」
篤「だから、そういうことじゃなくて…」
篤「ここ住んでくんないって言ってんの。」
「………」
いまくれた言葉を上手く飲み込めずにただ黙って彼を見ていれば、パッと目を逸らした恋人の顔はどんどん照れ臭さそうに歪んでいく、
髪の毛から覗く赤く染まった耳が、
何故か自然と私の視界をボヤけさせて、
篤「…あれ、別にもう日付変わってるから、俺の言うこと聞く必要ないよ。」
篤「仕事場遠くなるしさ、」
篤「嫌なら嫌で…別に、」
「………」
だからこの時まで言わなかったのだろうか、
私に無理強いしないために、
3月27日が終わるこの時まで、
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いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます!同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください!いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(・_・;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:laiz | 作成日時:2013年10月21日 20時