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「もしかして、あんなにあったのもう食べちゃったの?」

篤「うん。」

「…凄いね。笑」





父が持たせた大量のそれを、たった一、二週間でたいらげた彼に驚きと共に笑い声が漏れる。





「家の持って行っていいよ。笑」

「まだ沢山残ってるから。」





"お父さんにも送ってもらうように頼んでおくね"と言えば、"まじ!?"とまるで子供のように目を輝かせて、



キッチンからありったけのチーズアーモンドとごんじりを抱えて戻ってきた恋人の姿が、少し父と重なって見えるのは何故だろう。





「…ふっ、」





あの日の二人の姿を思い出し、

笑い声と、温かい気持ちが広がっていった。






ーー






少し遅めの昼食にやって来たのは、デュッセルドルフにあるお寿司屋さん。

"雑魚キャラなしで"と独特な注文をする彼にも戸惑う様子のない店員を見ると、ここは彼の行きつけの店であることが伺える。





『彼女?』





私たちより一回り程歳上だろう女性店員は、ニヤリと笑いながら彼の耳元で呟いて、





篤「いいから仕事しなよ。笑」





照れ臭そうに答えを濁しながらお茶を啜る彼の肩をバシッと叩き、"隠さなくてもいいのに"と笑っている。

目の前でされるそんなやり取りに、私まで頬が熱くなってしまう。





篤「…別に隠したわけじゃないからね、」





店員が去った後、ばつが悪そうに呟いた彼は、はっきり肯定しなかったことを私が気にしているとでも思っているのだろうか。

答えを濁すところも、私は彼らしくて好きなのだけれど、



そんな彼が可笑しくなって笑えば、益々不機嫌そうにお茶を啜っていた。





『ありがとうございました。』





"雑魚キャラなし"の食事を終え、先程の女性店員に会計を済ませる彼。

"来週試合見に行くよ"、"俺出てるか分かんないけどね"といくつかの会話を終えた後、彼は躊躇いがちに口を開いた。





篤「…また彼女と来るわ。」





小さく付け加えたその言葉に女性店員は少し驚いたような顔をして、

でもそれ以上に、きっと私の方が驚いているけれど、



"お待ちしてます"ととびっきりの笑顔で見送られれば、隣の彼は私と同じく耳まで赤く染めているのが分かる。





「ありがとう。笑」

篤「…だから、またそれを言う。」





"いちいち言わなくていい"と言われても、彼の愛情を前に言わずにはいられない。



相変わらず不器用すぎる優しさも、

照れ隠しの冷たい言葉も、

彼らしくて私は好きだ。

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いく(プロフ) - ちなみに、わたしもずっとピアノをやっているので出てくる作品がお気に入りだったりして楽しいです。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - こんなにひき込まれた作品は初めてです。ヒロインが幼馴染といる時に内田さんの言葉一つ一つを思い出してしまうところ、涙が止まりませんでした。続編、読み進めようと思います。 (2014年10月26日 18時) (レス) id: 90fb3cb615 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!素っ気ない内田さんでも、主人公は結構愛情をストレートに表現するので大丈夫なのかもしれません(^^)最後の伏線、だんだんと明らかになっていく予定です。なにが二人を待ち受けているのか…(._.)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» ありがとうございます!同棲生活、順調な滑り出しです(^^)車をサラッと購入って…もう内田さんにしか出来ませんよね(^^)続編作成致しましたので、これからの二人がどうなるのか是非覗きにいらしてください!いつ温かいお言葉をありがとうございますm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - うっちーさん» あちらの作品も気に入って頂けたみたいで嬉しいです(*^^*)ずっと更新滞ってしまっていますが、そろそろ更新しないとですね(・_・;こちらのお話は続編作成致しましたので、是非覗きにいらしてください(^-^)いつも温かいお言葉をありがとうございましたm(_ _)m (2013年11月14日 20時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:laiz | 作成日時:2013年10月21日 20時

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