交響曲第5番 ll

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翌朝、



静岡に帰るという彼は朝早くに家を後にした。



家の雰囲気にも少し慣れたのか、朝食の時彼らしい食べっぷりを見せてくれると、父と母は驚いたように目を見開いていた。





"やっぱりアスリートは良く食べるんだな"

"今度からはお茶碗じゃなくて丼にしましょう"





感心したように言う父と、沢山食べる彼に嬉しそうにしている母、

隣には照れ臭そうに笑っている恋人がいて、



この上なく幸福な朝に、私の頬はだらしなく緩んでいた。





帰り際、大きな紙袋を彼に持たせた父は、"なくなったら言いなさい。ドイツに送るから"といつもの優しい笑顔を見せてくれて、

彼と二人で袋の中を覗けば、大量のチーズアーモンドとごんじりに笑い合った。





"よいお年を。"

"篤人くんも。"





そんな言葉を交わして別れた恋人とは、





"あけおめ"

"今年もよろしくね。"





新年早々、

電話越しで2012年初の挨拶を交わして、





私より一足先に日本を後にした恋人は、今頃きっとカタールで、"自分に出来ることをコツコツと"やっているのだろう。





ー早く彼に"流れ"が来ますようにー





友人たちと行った初詣で祈ったことは、

きっと彼自身が掴み取り、現実のものにするのだろう。





ーーーvorwarts…



＜弾いてくれんでしょ？俺が寝るまで、＞



ーーー





その日が来るまで、

私はいつでも寄り添っていよう、





母「たまには連絡しなさい？」

「うん。」

母「寒いから風邪ひかないようにね。」

「わかった。」





三が日も終わり、今日ドイツに出国する。

毎度毎度空港まで見送りに来てくれる両親は、いつも少し寂しそうな顔をして、





父「4月のお母さんとの旅行は、ドイツに行くことに決めたよ。」

「そうなの？」

父「その頃には仕事をしてる姿が見れるようになってるだろう、内田くんなら。」





"ルールを勉強しておかないとな、お母さん"と言う父は、私の大好きな優しい笑顔で、





「うん。待ってるね。」

「彼と二人で。」





また溢れ出してしまいそうな涙をぐっと堪えた。





母「内田さんにもよろしく伝えてね。」

父「泣かされたら言いなさい。お父さんが殴ってやるから。」



「ふっ、はい。笑」





手を振る両親を背に、出国ゲートを進んで行く。





次に恋人に会えるのは、

彼がキャンプから帰ってきた後、

私たちが出会ったあの街でーー

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