交響曲第5番 ll

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篤「だからその分、」

篤「僕も約束は守ろうと思ってます。」



「…？」



篤「多分もう一生分傷つけたし、」

篤「哀しませたし、泣かせちゃってるし、」





ーーーvorwarts…



＜俺もう一生分泣かせちゃったでしょ？＞



ーーー





篤「でももう泣かせないように努力するって約束したんで、彼女と、」



「………」



篤「この先自分になにが出来るかはわかんないですけど、」

篤「多分、そんなたいしたことは出来ないですけど、」



「………」



篤「そこだけは守っていこうかなって、」

篤「守んなきゃなって、思ってます。」





ーーーvorwarts…



＜これからは泣かせない。＞

＜…ように努力します。笑＞



ーーー





「………」





強弱のない、飾らない彼の言葉は、

いつだって私の心に簡単に到達してしまう。



それはきっと、私だけではないはずで、



優しく頬笑む母にも、

彼を真っ直ぐに見る父にも、



きっと届いているはずだ。





母「あらあら、笑」





私を見て優しく笑った母は、"せっかくいま内田さんが言って下さったのに"とティッシュケースを差し出す。



それがぼやけて見えるのは、

知らぬ間に溢れ出していた涙のせい、





「……ごめんなさい、」





隣からティッシュをささっと取った彼は、"言ったそばから約束やぶってすいません"と苦笑いしながら、

頬まで落ちてきた私のそれを雑に拭う。





母「こんなに素敵な彼がいるなんて、」

母「幸せね？Aさん。」



「…うん。凄く。」





益々溢れ出てくる涙に、彼は照れ臭そうに顔をしかめて、



ぼやける視界の中、近くで彼と視線が絡めば、

いつかもあったようなそんなやり取りに小さく笑い合った。





母「遠い国に娘を一人にしておくのは心配だったんですよ。」

母「でも内田さんがいてくれたら安心だわ。」

母「ね？お父さん。」



父「………」





母の問いかけにばつが悪そうにしている父は、

目線も合わせないまま目の前にあるビールを一口流し込んだ。





父「………まぁ…そうかもしれないな、」





小さく呟いたその言葉は、いまにも消えてなくなってしまいそうで、



でも父の気持ちは、

私にも、隣にいる恋人にも、

ちゃんとしっかり届いている。

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