交響曲第5番 ll

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〜♪〜♪





母「お父さん、内田さんがいらして下さいましたよ。」





父が奏でるその音は、いつもより少し固くて、

母の声はきっと届いているはずなのに、弓を引く手を止めることはなかった。





母「気にしないで下さいね。」

母「一度弾きだすと止まらないんです。笑」





溜息まじりに笑った母は、彼をソファに座るように促すと、"大丈夫よ"と私の肩をポンっと叩きキッチンへと消えていった。





リビングに響くのはチェロの音色だけ、

目も合わせようとしない父を真っ直ぐ見つめている彼は、"お父さん"と呼びかけようとする私をそっと止める。





「…ごめんね。」

篤「あれ弦楽器ってやつ？」

「え？うん。」

篤「確かに、Aが言ってた通りリラックス効果高けー。笑」





くしゃっと笑って見せた彼は、"心配するな"と私に伝えてくれているのだろう。

その笑顔に導かれるように、ただ黙って父の奏でる音色に耳を傾けた。





母「あら、まだ弾いてるの？」





暫くして料理を運んで来た母は、呆れたように息を漏らすと、"ごめんなさいね"と彼に言う。





母「お父さん、先に食べちゃいますよ？」

母「内田さんもお忙しい中お時間取って下さったんですから、いい加減終わりにして下さい。」





チェロの音色より大きく響いた母の声に、やっと弓を置いた父。

立ち上がり挨拶をしながら頭を下げた彼に、父は目を逸らしたままテーブルの椅子に腰掛けた。





母「…さぁ、とりあえずいただきましょうか。」





気まずい空気を切り裂くように言った母に促され、ずらりと並べられた料理を囲む。



五人前は軽く超える量に父は少し驚いていて、"作りすぎだろう"と初めて母に向かって口を開いた。





母「少しはりきりすぎちゃいましたね。」

母「内田さんは良く食べる方だって、Aさんが言ってたものですから、笑」



「でもこれはちょっと作りすぎかも。笑」



篤「いや、有難いです。笑」





"人の倍食べるんで"と箸を動かす彼は、なんだかいつもより少しおしとやか。

普段は少しのおかずに大量の白米をかき込むのに、まるで私たちのペースに合わせるようにしている姿に少し笑ってしまう。





「本当はもっと凄いペースで食べるの。」

「私も最初はビックリして、ついつい見とれちゃったくらい。笑」



母「あら、そうなの？」





"遠慮しなくていいのに"と言う母に、彼は照れ臭そうに笑った。

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