交響曲第5番 ll

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篤「サイズ合ってんじゃん、これ、」





オフホワイトのドレスの裾をひらりと触りながら、目線も合わせずに彼が言う。





「うん。良かった、太ってなくて。笑」

篤「ふっ。根に持ってるっしょ、あのメール。笑」

「ううん、少し驚いたけど、笑」

篤「あれだよ、メールって言葉のニュアンス伝わんないでしょ。だから、」





昨日の一見不躾なメールの話で小さく笑い合えば、チラリと横目で私を見た彼は、

"やっぱこういうの着るとあれだね、いつもと違う"と彼なりの褒め言葉をくれて、





「ありがとう。ドレスまで用意してくれて。」

篤「…別に。お返しだから、それ。」

「え？」



篤「少し早いクリスマスに鳥もらっちゃったからね、俺。」

篤「少し遅いクリスマスってやつ？笑」





そう言う彼は、また車窓の方を見ながら笑っていて、

"めりーくりすまーす"と嫌そうに言った彼を思い出し、私の頬も自然と緩んだ。





"…予定、あるみたい"





あの日、

私は彼と同じだけの愛も、覚悟も備わっていなかった。



誰も哀しませたくなくて、
傷つけたくなくて、



でも、こんなに沢山の優しさをくれる彼を愛していることで、一体誰が哀しむというのだろう、

誰を傷つけるというのだろう、





"時間がかかってもいいから、お父さんにはちゃんとあなたから話しなさいね。"

"お父さんもきっと分かってくれるから。"

"親っていうのはね、娘が幸せならそれでいいのよ。"





いま、この上なく幸福なのに、





「…篤人くん、」

篤「ん？」

「…明日の夜、まだ予定入ってない？」





流れる景色を眺めていた彼は、驚いたようにこちらに振り向くと、真っ直ぐに向けた私の視線を受け止めてくれる。





篤「…暇。」

「…両親に、会ってもらえる？」





"急でごめんなさい"と小さく付け加えれば、彼は優しく微笑んで、

"急すぎ"と笑いながら、そっと私の髪を梳く。





篤「ね、ジャケットとか入れといてくれた？」

「うん。入れたと思うけど、」

篤「さすが。笑」





"じゃ、それ着てけばいっか"と呟いた彼は、

髪を梳いていた指をツーっと滑らせると、私の頬に優しく触れる。





"A、たまには帰って来なさい"

"なにかあったらいつでも電話しなさい"

"お父さんとお母さんは日本で応援してるから"





愛しげに向けられた彼の視線が、

私の背中をそっと押した、

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