交響曲第5番 ll

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「？」





部屋を後にし、いつものように鍵穴に鍵を差し込もうとした時、

彼の手がぱっと私のそれを振り払う。





篤「貰ったもんは使わないとね。」





しれっといま渡したばかりの合鍵で鍵穴を回した彼は、そう言ってそのまま廊下を歩き出す。



ポケットからヒョコっとはみ出たキーホルダーが、彼が歩くたびに揺れていて、

それを少し後ろから眺めていれば、"早く行くよ"と振り返る彼。





「うん。」





"遅い"と小言を漏らす背中を小走りで追いかけそっと腕に手を添えれば、彼が優しく笑って、

また一つ増えた、私の幸福、









時刻は夜中の3時、



仕事を終えて暗い夜道を一人歩いていれば、数時間前に彼からのメッセージが届いていたことに気づく。





＜こいつ俺のことすげー見てくんだけど。怖い。＞





一緒に添付されていたのは、キーホルダーの男の子の目を指で隠している写真。

誰もいない暗闇の中、つい一つ笑い声が漏れて、





「？」





アパートに着き郵便受けに目をやれば、白い封筒が少し覗く。

不定期に送られてくるそれは、実家に届いた私宛ての郵便物を母が転送してくれるものだ。





自分の鍵についたキーホルダーを見ながら、"可愛いのに"なんてボソッと呟き部屋に入る。

つい数時間前まで彼が眠っていたソファにドスっと腰掛け、何の気なしに届いた封筒にハサミを入れた。





「………」





何枚かある郵便物の内、往復葉書に機械的な文字で書かれていたそれは、

11月のこの時期になると必ず目にするそれで、





「………」





"私は嫌だな、Aが違う人となんて"

"だって、二人でいるのが一番いいに決まってるのに"

"ずっと待っててくれたんだよ？あんないい男性いない"





"AにはAの考えがあるの"

"気持ちも。ね、A？"





"やっぱり相馬くんとAはお似合い"

"昔から憧れだったもん、美男美女で"

"変わらないみたいで安心した"





「………」





"Aには笑っててもらわないと困るんだ"

"俺の大事な幼馴染だから"



"A"

"次会う時は、笑顔でいてね"





「………」





"ずっとドイツにいるつもりか？"

"お父さん喜んじゃって、一昨日からあの調子"

"Aちゃんがついててくれれば安心なんだけど"









ー同窓会のご案内ー









日本に帰ればきっと大切な人たちを哀しませてしまうこと、

忘れていたわけじゃない、

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