20 ページ20
<何味がいい?>
彼からそんなメールが届いたのは、帰国を二週間後に控えた日のことだった。
あれから彼は、たまにカウンターの一番奥の席にバナナジュースをフラッと飲みに来ては、
二人で眠るには少し狭いセミダブルのベッドで眠っていく。
でもあの日のように眠れずに私の帰りを待っているのではなく、
"風呂沸かしといた"
"明日は8時だから起きなくていい"
そんな書き置きをテーブルに残し、ベッドの左側に少しのスペースを空けて寝息をたてている。
"朝食作っておいたから温めて食べてね"
"いってらっしゃい"
ささっと作った朝食と、そんな書き置きを残して眠るのは明け方で、
私が起きた時にはもう既に彼の姿はない。
こんな日は殆どなにも話せずに終わってしまって、テーブルに置かれた書き置きだけが私たちの会話だけれど、
家に帰れば恋人の安心しきった寝顔があって、
左側の空いたスペースに寝転べば無意識の中抱き締めてくれる、
それだけで私の心は満たされるし、きっと彼の心は軽くなっているのだろうと思う。
<何の話?>
数分前に届いていた彼からのメールにそう返信しようとした時、
私の手を止めたのは玄関の扉が開く音だった。
「あ、いまメール返そうと、」
篤「ん。」
寒さで鼻を赤くしてやって来た彼は、私の言葉を遮って袋を差し出す。
篤「とりあえず片っ端から買ってみた。」
中を見れば、何種類ものアイスクリームが大量に入っていて、
"冷凍庫入るっしょ?"と問う彼の多すぎる"お礼"につい笑いが漏れてしまう。
「一個で良かったのに。笑」
篤「だって何味がいいか返事よこさねーから、」
「冷凍庫入るかな?笑」
篤「無理矢理詰めりゃ何とかなるって。」
私の手からそれを奪うと、雑に冷凍庫へ放り込んだ彼。
案の定閉まらない冷凍庫に、少し不機嫌そうに顔を歪めている。
篤「何味?」
「え?」
篤「一個ずつ食えば閉まる。」
「じゃあ、バニラ。」
篤「バニラは駄目。俺の。」
「ふっ、じゃあチョコ。笑」
篤「ん。」
ソファの上で、二人でブランケットに包まりながらアイスクリームを食べる。
"冬のアイスって破壊力抜群じゃね?"とバニラの香りを漂わせる彼は、"うまっ"と言いながら身震いしていて、
篤「ん。」
「え?」
篤「一口だけね。」
"あーん"とスプーンに乗せたバニラを私の口に運ぶ彼に、頬はだんだんと熱を持ってゆく。
317人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
laiz(プロフ) - りんごさん» あんなことを言ってくれたら、両親も安心ですよね(*^^*)さが内田さんです(^^)私もこの二人の空気感が気に入っているので、書いていてたのしいんです^ ^このお話まだまだ続きますので、これからも是非見守っていて下さい! (2013年10月23日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 両親への挨拶の所、内田さんステキすぎてまたまた泣いてしまいました(;_;)このお話しほんと大好きです!ずっとこの二人を見ていたいなって思っちゃいます(^^♪ (2013年10月21日 20時) (レス) id: 842b9c30a7 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» こちらこそ、いつも素敵なお言葉をありがとうございます(*^^*)内田さんのおかげで主人公もやっと前に進むことが出来ました(^^)この後もどんどん絆を深めていってほしいですね^ ^この後続編更新致しますので、またそちらでもよろしくお願いします! (2013年10月21日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!後半はキュンキュン、ニヤニヤを詰め込んでみました(^^)問題を解決した後の二人はどうなりますかね^ ^ななさんのおっしゃる通り、また新たな問題もあるのでしょうか…(^^)この後続編更新致しますので、またそちらでもお力を貸して頂けたら嬉しいです! (2013年10月21日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - samiiさん» またまたコメントありがとうございます(*^^*)更新が中々スムーズじゃなく申し訳ないです(>_<)このペースからは落とさないように頑張りますね!内田さんの最近の安定ぶりは凄いですよね(^^)私もそう思うと複雑です。笑"お待たせしました!この後続編更新します! (2013年10月21日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:laiz | 作成日時:2013年9月21日 19時