16 ページ16
〜♪〜♪
一時間弱のプログラムを終え、
向かったのはカウンターの一番奥、グランドピアノから一番離れた席にいる彼の元。
"いらっしゃいませ"と小さく笑いながら言った私の言葉に、彼は照れ臭そうにグラスを持った手を少し上げた。
「お酒?」
篤「いや?バナナジュース。笑」
「そっか。笑」
一人でグラスを傾ける彼の姿は初めてで、
少し腫れた目をする彼も初めて、
いつもと変わらず"飲む?"なんて冗談めかして笑っているけど、その声のトーンはいつもより少し暗い。
「マラ5?」
篤「いや、ダメ。」
「え?」
篤「マラ5は今じゃない。」
てっきりリクエストされると思っていた曲ではないことに少し驚いていると、そんな私を見て彼は小さく笑い声を漏らした。
篤「俺が聴きたいの当ててみ?」
「んー…ヒントは?」
篤「Aは絶対知らない曲。笑」
「…もう、性格悪い、」
二人でクスクス笑い合えば、どこかぎこちなかった彼の笑顔が少し戻った気がして、
「でも、なんとなく分かるよ。篤人くんが聴きたい曲。」
篤「ふっ、知らないのに?笑」
"うん、知らないけど"と答えれば、彼は"ははっ"と面白そうに笑い声をあげる。
篤「じゃあそれ弾いてもらえます?笑」
「かしこましました。笑」
篤「当たったら晩飯奢ってあげる。笑」
〜♪〜♪
当たるはずがないと思っているであろう彼のリクエストに応え奏でたのは、
彼の言う通り"知らない曲"。
曲名も歌っている人も分からないこの曲は、繊細な歌声で奏でるピアノの弾き語りが印象的で、
"知らない曲"のはずなのに覚えてしまったのは、最近彼のPCから頻発に流れていたのを自然と耳にしていたから。
ーWho will love you ?ー
ーWho will fight ?ー
ーWho will fall far behind ?ー
そんな歌詞で締めくくられる、哀しい歌、
"パチパチパチ"
一礼してカウンター席を見れば、そこには傷みに耐えながら笑みを浮かべている彼の姿。
私に、一際大きな拍手を送ってくれていた。
ー誰があなたを愛してくれる?ー
ー誰があなたのために戦うの?ー
ー置き去りにされるのは 誰?ー
二人なにも口にはしない代わりに、
私のこんな音で貴方に寄り添えたらそれでいい。
"不正解?"
一番遠くにいる彼に微笑めば、
"正解。"
彼のそれは優しい笑みに変わっていった、
317人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
laiz(プロフ) - りんごさん» あんなことを言ってくれたら、両親も安心ですよね(*^^*)さが内田さんです(^^)私もこの二人の空気感が気に入っているので、書いていてたのしいんです^ ^このお話まだまだ続きますので、これからも是非見守っていて下さい! (2013年10月23日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 両親への挨拶の所、内田さんステキすぎてまたまた泣いてしまいました(;_;)このお話しほんと大好きです!ずっとこの二人を見ていたいなって思っちゃいます(^^♪ (2013年10月21日 20時) (レス) id: 842b9c30a7 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - neneさん» こちらこそ、いつも素敵なお言葉をありがとうございます(*^^*)内田さんのおかげで主人公もやっと前に進むことが出来ました(^^)この後もどんどん絆を深めていってほしいですね^ ^この後続編更新致しますので、またそちらでもよろしくお願いします! (2013年10月21日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - ななさん» こんばんは!後半はキュンキュン、ニヤニヤを詰め込んでみました(^^)問題を解決した後の二人はどうなりますかね^ ^ななさんのおっしゃる通り、また新たな問題もあるのでしょうか…(^^)この後続編更新致しますので、またそちらでもお力を貸して頂けたら嬉しいです! (2013年10月21日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
laiz(プロフ) - samiiさん» またまたコメントありがとうございます(*^^*)更新が中々スムーズじゃなく申し訳ないです(>_<)このペースからは落とさないように頑張りますね!内田さんの最近の安定ぶりは凄いですよね(^^)私もそう思うと複雑です。笑"お待たせしました!この後続編更新します! (2013年10月21日 19時) (レス) id: e2e17d63f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:laiz | 作成日時:2013年9月21日 19時